消費税のインボイス制度に関する話題のなかで、「売れないアーティストには価値がない」という言葉を目にした。新しい制度の導入で金銭的に困る人の作品には需要がなく、才能がないのだという。 今年に入ってから、働きながらバンドを続けている友人たちと音楽制作を行っている。それぞれの仕事や家族との生活の合間を縫うようにして集まり、貴重な時間を使って制作したアルバムが間もなく完成する。録音された楽曲の隅々から、バンドマンとしての彼らの人生や、現在の彼らの魂の震えが感じられて、たまらない気持ちになる。金銭的な価値では測れない凜(りん)とした魅力がそこには存在する。たとえ商業的な成功が得られなかったとしても、この作品の価値は揺らがないと僕は思う。 アートの役割のひとつは、既存の価値観を揺さぶることではないだろうか。「売れないアーティストには価値がない」という言葉には、それを放った本人の思想よりも、金銭的な価値