藤本氏と富山から上京して最初に僕らは両国に下宿したんですけれど、手塚先生のところに行ったら、先生が『トキワ荘を出るから僕のあとに入らないか』と言われて。本当にうれしくて入りたいと思ったんですけれど、敷金が3万円だと言われた。当時の僕らは3万円など持っていないので断ったんですよ。そしたら先生が『敷金のことを心配しているのであれば、そのまま置いていくから入らないか』と言われて、その場ですぐ『お願いします』と頭下げて入ったんですよ。先生が3万円を貸してくれなかったら、トキワ荘に入れなかった。 トキワ荘の部屋には、先生がそのまま机を置いていかれて。でかい机ですから、僕と藤本氏が2人で並んで座っていた。そうすると先生のオーラが伝わってくるような気がして、非常にのれて漫画を描いた記憶がありますね。 トキワ荘では、みんなでワイワイ集まって騒ぐのがすごく楽しいんですよ。暇でみんな仕事はなくて先のことを考え