立川談志 独演会 於所沢ミューズ マーキーホール どちらかと言えば、談志はあまり好きではなかった。あの底の浅い衒学的饒舌や露悪趣味的なナルシシズムが、というのではなく、あくまで噺家として私の趣味には合わなかったというだけのことだ。しかし、志ん朝亡きあと、さて落語の行く末はと思い至った時、この人の存在は無視することはできないように思う。なんと言っても落語に対する愛情と情熱の点でこの人の右に出る者は確かに見当たらないのだから。 そんな訳で、地元の所沢で開かれた独演会に例年より早い花冷えの中を出掛けた。前座もいない独演会だから当然とは言え、いきなり談志がご機嫌をうかがう。例のごとく世相批判やら政治ネタをボソボソと繰り出す。宗男ネタもしっかり受けている。しかし、どことなく疲れている感じ。柄にもなく客を誉める。「勘九郎は可哀想だ。いくら頑張っても客があれじゃ、芸は生きないよ。その点、俺はいい客に恵ま