アニメーションで独特の美しい世界を表現する、フランスの鬼才ミッシェル・オスロ監督の最新作はパリへの想いに溢れた宝石箱のような作品だ。 ニューカレドニアからやってきた主人公ディリリは、最初の友人オレルとともに、この時代を彩った多くの天才たちと出会い誘拐事件の謎を解いていく。 夕暮れのヴァンドーム広場、着飾った人々の集うオペラ座、チュイルリー公園や凱旋門など息をのむほどに美しいパリが描かれる。この風景は監督自身が4年間撮りためた写真をもとに作られ、黄金が滴り落ちるようなオペラ座の大休憩室の豪奢な輝きは、当時の華やかさそのままに再現されている。 19世紀末から20世紀初頭の、自由闊達で華やかなパリは、また世界中から多くの才能を惹きつけた時代でもある。映画に登場する著名人は100人を超える。女性として、母国では受けることのできなかった教育を求めてパリに来た化学者マリ・キュリー、細菌学者パスツールや