食について書かれたエッセイというのは、概ねおもしろいものである。それが本になっているということは、編集者という他者が、これはおもしろいんじゃないかという意識を介していることだ。それなりに見識のある他者の目を介した食の話なら自然に他者の広がりへと共感を産むものだ。そのことは、本書『パスタぎらい』にも当てはまる。食のエッセイとしてとてもおもしろい。だが、この本、なんか、度を越しているぞ。 なんというのだろう、揶揄の含みはないが、イカレている、というのだろうか、昔の言葉でいうなら、ぶっ飛んでいる、のである。読み進めるに、ヤマザキマリという人はこんなにも変な人なんだというのが、ぐいぐい迫ってくる。脳がしびれてくるような感じがする。本書だけにつけられた彼女のイラストの表紙のあるイカレた感じも、じわじわとくる。 カバー絵の女はなんのパスタを食べているのか? ナポリタンである。ヤマザキマリは35年もイタ