基本的に無表情で無口なエイジさんの心の中にこんな葛藤があることを知り、驚いた。ありがとう、ごめんなさいという言葉を発することを過度に警戒するのも、こうした心理と関係があるのかもしれない。 とはいえ、最終的にはマジョリティーである定型発達にエイジさんが合わせることになる。エイジさんは納得も共感もできないと思いつつも、まずはありがとうと言うことを心がけた。待ちぼうけを食らわせた来客にも謝った。電話応対では、できるだけ事前に想定問答や聞くべきポイントを文章に書き起こすようにしている。先日は、体調不良だという組合員に対して電話越しに「おかげんいかがですか?」と言ってみた。 「毎日が観察です。清水さんたちはどんなときに『ありがとう』と言うのか、どんなときに笑顔になるのか」とエイジさん。人間関係は変わりましたか? と尋ねると、「少しだけスムーズになったかな」と笑顔を見せた。その笑顔が本心からのものなの