今回からイギリスの公的保健医療制度(National Health Service、以下NHS)の現場で実際に何が起きているのか、一つひとつ見ていこうと思います。 第13回でも説明した通り、NHSはプライマリ・ケアを基盤とするシステムです。ですので、プライマリ・ケアの現場を紹介することがNHSの全体像へと近づく一つの手だと考えています。今回は、第8回で触れたプライマリ・ケアの特徴の一つである「適切なアクセスの担保」についてお話しします。 疾病構造の変化や高齢化など日本同様、多くのチャレンジに直面しているイギリスですが、ここ10年ほど続く保守党政権の緊縮財政により、医療費は年々プラスながらその伸びがとても低く抑えられてきました。これは実は「医療費抑制の時代」と揶揄される一昔前のサッチャーら保守党政権時よりも低く、NHSはその設立以来、最も厳しい時代を迎えています。その間、生産性の向上に努めて