[要旨]ウィンチの『社会科学の理念』はさまざまな批判を呼んだ著作であるが、その議論の柱は(1)社会科学の方法論を哲学と共通のものと捉える「方法論テーゼ」と(2)社会科学の対象となる行為を当事者のもつ概念を使って理解すべきと考える「内在テーゼ」である。本稿では、この二つのテーゼの内実を分析したうえで、それぞれのテーゼがウィンチ独自のウィトゲンシュタイン解釈からの帰結であることを明らかにする。そのうえで、両テーゼの関係性を改めて捉え直し、現在でも社会科学の方法論として適用可能となるために両テーゼをどのように解釈すべきかを提示する。