ファンタジーな世界に召喚されるなり、その転移者は自分を囲む魔導士たちに向かって言った。 「もうしわけないが私は剣をとって戦ったり走り回ったりするのは苦手でね。あなた方が期待するような役目は果たせないと思う」 さっさと送り返せと目で訴えかける転移者に魔導士の一人が進み出て答える。 「そのような勇者様は五十年前にお仕事をなされました。我々はあなたに賢者、いえ裁定者として働いていただきたいのです」 「それはそれは重ねて他力本願なことだ……せめて、椅子と飲み物のある場所で話を聞かせてもらえないだろうか?」 すぐに帰してもらえないと察した裁定者は、せめて落ち着いて話を聞ける環境を要求した。 石材に囲まれた地下室から上がって、今度は毛織物に包まれた豪華な一室で裁定者は魔導士の説明を受けた。 「五十年前、勇者様は魔王軍側に寝返り世界を制覇されました。事実上の魔王軍の乗っ取りだったと言われます」 「それで
VTuberグループShell'sに新しいVTuberが加入した。名前は干潟マテ。中性的な容姿と声をした少し幼い印象を与える配信者である。いきなり3Dのアバターを与えられているが、これは汎用のボディを調整したもので完全一品物の2Dアバターより安いという話だった。 先輩たちはそういう話で運営に納得させられた。 かわいがりたい、もといかわいい後輩の干潟マテは配信より先にSNSの∨∧(旧シイッター)で人気を博して、その人気が配信プラットフォームに移行する形で伸びていった。その勢いは先輩たちもうかうかしていられないと真顔になるほど。 特に伸び幅を完全に失っている状態の濁川たにしは強い危機感を覚えていた。一方、中洲しじみはAI以外では初めての後輩なので、かわがりたい気持ちの方が強いようだった。 そんなマテにも悩みがあり、運営経由で汽水あさりに話が回ってきた。オフコラボがあった機会に事務所のブースで新
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