長らく停滞する日本の賃金。経済誌も「安い日本」をこぞって取り上げるようになった。労働組合はこの課題にどう対応できるのか。労働組合の持つ「武器」とは何か。濱口桂一郎氏に寄稿してもらった。 「安い日本」の源流 最近、「安い日本」がホットな話題になっています。日経新聞の中藤玲記者が書いたそのものズバリの『安いニッポン──「価格」が示す停滞』(日経プレミアシリーズ)は、特にその第2章(人材の安い国)で年功序列(がもたらす初任給の低さ)や横並びの賃金交渉、さらには「ボイスを上げない日本人」に、低賃金の原因を求めています。その理路は相当程度同感できるものではあるのですが、実はそもそも、「安い日本」は経済界と労働界が共同して求め、実現してきたものではないのか、という疑問もあります。 今から30年前、昭和から平成に変わった頃の日本では(今では信じられないかもしれませんが)、「高い日本」が大問題であり、それ