男に貢いだ揚げ句、裏切られた女性が恨みから犯罪に走る――。いまもよくある出来事だが、それが約80年前、女医が饅頭(まんじゅう)にチフス菌を混入させて食べさせたというのだから尋常ではない。1939年に兵庫県で起こった「チフス菌饅頭事件」。 男尊女卑の風潮が厳然とあったうえ、第2次世界大戦勃発直前の風雲急を告げる時代。それでも、容疑者女性に圧倒的な世間の同情が集まり、裁判でも殺人か傷害致死かで判断が揺れ動いた。発端が「夫」に博士号を取得させるためというと、博士になっても大学などの専任教員になれない「ポストドクター」がごろごろいる最近とは隔世の感があるが、事件自体は、いま起きてもワイドショーや週刊誌の格好のネタになるセンセーショナルな話題性を備えている。 「博士に仕立てた夫を恨んで 菓子折に仕込んだチブス菌」 「純愛裏切られた女醫(医) 博士に仕立てた夫を恨んで 菓子折に仕込んだチブス菌 食べた