宇宙の万物に質量を与える粒子の存在を理論的に予想したイギリスの物理学者、ピーター・ヒッグス博士が8日、死去した。94歳だった。
私たちの宇宙について、広い目線で見れば天体や物質の分布が均質であるという「宇宙原理」が広く信じられています。しかし近年の観測では、宇宙原理に反すると思われる巨大構造物(宇宙の大規模構造)がいくつも見つかっています。 セントラル・ランカシャー大学のAlexia Lopez氏は、地球から約92億光年離れた位置(※)に、直径が約13億光年にも達する巨大構造物「ビッグ・リング(Big Ring)」を発見したと、アメリカ天文学会(AAS)の第243回会合の記者会見で発表しました。Lopez氏は2021年にも同様の巨大構造物である「ジャイアント・アーク(Giant Arc)」を発見していますが、両者は非常に近い位置と距離にあります。これは宇宙原理に疑問を呈する発見です。 ※…この記事における天体の距離は、光が進んだ宇宙空間が、宇宙の膨張によって引き延ばされたことを考慮した「共動距離」での値です。これに
Published 2024/01/29 11:04 (JST) Updated 2024/01/29 12:48 (JST) 月面でメインエンジンが上を向いた状態の探査機「SLIM(スリム)」(右上)。分離した超小型変形ロボット「SORA―Q(ソラキュー)」が撮影した=20日(画面の中央にデータの欠損があります) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は29日、世界5カ国目の月面着陸をした探査機「SLIM(スリム)」の運用を28日から再開したと明らかにした。着陸時の姿勢異常で発電できなかった太陽電池パネルが、太陽の向きが変わって稼働し始めたとみられる。バッテリーもなくなり中断していた月面での鉱物観測も実施できたとしている。 鉱物観測では、月の地中深くにあるマントルに由来する鉱物「かんらん石」の組成を分析し、月がどのように形成されたのか歴史を解明する。世界初となる「ピンポイント着陸」の成功に加え
#JAXA#SLIM JAXAの宇宙科学研究所で所長を務める國中均氏は1月20日の会見で、小型月着陸実証機「SLIM」の月面着陸成功について「ギリギリ合格の60点」と評価した。 左からJAXA宇宙科学研究所で副所長を務める藤本正樹氏、同所長を務める國中均氏、JAXAで理事長を務める山川宏氏 SLIMは日本初となる月面着陸に成功し、世界でも旧ソ連、米国、中国、インドに続く5カ国目の快挙となった。さらに、超小型プローブ2機「LEV-1」「LEV-2」の展開にも成功した。 しかし、着陸後に太陽光パネルが発電しないなどの課題が発生していることや、國中氏の「所長」という立場を踏まえ、辛口に評価したという。 なお、SLIMでは、着陸成功について3段階に分けて定義している。 「ミニマムサクセス」は、小型軽量な探査機による月面着陸を実施すること。 「フルサクセス」は、精度100m以内の高精度着陸が達成され
宇宙が誕生した初期のころに、太陽の数百万倍という極めて大きな質量のブラックホールが存在していたという研究成果を、イギリスなどの研究チームが発表しました。このブラックホールはこれまで見つかった中で最も古いものだということです。 この研究は、イギリスのケンブリッジ大学などの研究チームが17日、世界的な科学雑誌「ネイチャー」に発表しました。 研究チームは、宇宙空間から天体観測を行う「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」を使って、はるか遠くにある銀河を調べました。 すると、今から130億年以上前、宇宙が誕生しておよそ4億年という初期のころにブラックホールが存在し、その質量は太陽の数百万倍という、極めて大きいものだったことがわかったということです。 このブラックホールはこれまで見つかった中で最も古いものだということですが、これほどの質量のものができるには、従来の考え方ではおよそ十億年が必要とされています
上下,左右,そして前後──空間の次元が3つあることは,私たちの身のまわりを見れば実感できる。これに時間を足せば,空間と時間が4次元で溶けあった「時空」になる。というわけで,私たちは4次元宇宙に住んでいる。しかし,本当にそうだろうか? 私たちが感じている重力や空間次元の1つは,もっと次元の低い時空での粒子の相互作用から生まれる一種の「幻」なのかもしれない。「ホログラフィック理論」と呼ばれる物理学の理論によると,重力のない2次元空間は重力のある3次元空間と完全に同等だと考えられる。ホログラムから生まれる立体映像のように,重力を含む3次元の世界は2次元空間の物理から生じているのかもしれない。 この2次元空間は,3次元空間の境界面に存在する。境界面上で起こっている物理現象は,クォークやグルーオンが強く相互作用する様子に似ている。一方,3次元空間内部での現象は,重力の量子論を含んでいる。2つの世界が
宇宙がどのように進化してきたのか探ろうと、100億光年先までの銀河を観測する宇宙望遠鏡「ユークリッド」が日本時間の2日未明、アメリカ南部のフロリダ州から打ち上げられました。 「ユークリッド」はESA=ヨーロッパ宇宙機関が中心になって開発した宇宙望遠鏡で、日本時間の2日午前0時すぎ、アメリカ南部フロリダ州にある施設から「ファルコン9」ロケットで打ち上げられました。 ユークリッドは宇宙空間を飛行しながら観測を行う望遠鏡で、口径が1.2メートルあり、可視光と近赤外線を観測できる2種類の装置を備えています。 これらの装置で100億光年先までの銀河を観測して巨大な地図を作り、宇宙の大規模な構造の進化の過程や、宇宙の膨張が時間の経過とともにどう変化してきたのか、明らかにすることを目指します。 そして、宇宙のあらゆる場所に存在すると考えられているものの、直接見ることも感じることもできない未知の物質「暗黒
ごくわずかな時間と空間のゆがみが波のように伝わる現象「重力波」が、宇宙のあらゆる方向からやってきていることを示す証拠を捉えたと、アメリカなどの国際的な研究チームが発表しました。 研究チームは、宇宙の成り立ちの解明につながるとしています。 重力波は、ブラックホールが合体するなど、巨大な質量を持った物体が動いた際、時間と空間のゆがみが遠くまで波のように伝わる現象です。 アメリカを中心とする国際研究チームは28日、ごく小さな重力波が宇宙のあらゆる方向からやってきていることを示す証拠を捉えたと、発表しました。 こうした重力波は「背景重力波」と呼ばれています。 重力波は、100年余り前にアインシュタインがその存在を理論的に示し、2015年、アメリカなどの研究チームが初めて観測することに成功しています。 このときに観測された重力波と比べると、周波数がはるかに低い「背景重力波」は観測が難しいとされていま
土星の衛星から宇宙空間に放出された水に、生命を構成する元素「リン」が含まれていることを発見したと、日本やアメリカなどの国際研究グループが発表しました。 研究グループは、地球と同じような生命がほかにも存在する可能性を広げる重要な成果としています。 太陽系で2番目に大きな惑星、土星をまわる直径500キロほどの衛星「エンケラドス」の地下では有機物を含む水が確認されていますが、詳しい成分は分かっていませんでした。 このため、日本やアメリカ、ヨーロッパの国際研究グループが2017年まで実施された土星探査機による観測データをもとに衛星の地下から宇宙空間に放出された水の成分を詳しく調べました。 その結果、DNAや細胞膜などの材料となり地球の生命にとって不可欠の元素「リン」を発見したということです。 衛星の水に含まれる「リン」の濃度は地球の海水と比べて1000倍以上とみられ、水と岩石との間で化学反応が起き
「『サイエンスZERO』20周年スペシャル」取材班 サイエンス激動の時代を捉えるため、日本のサイエンス各分野の著名な研究者に「サイエンスZERO」の20周年(3月26日(日)夜11:30~ NHK Eテレ)を記念し、この20年の研究を振り返ってもらうインタビューを行いました。そこでどの研究者からも飛び出してくる驚きの言葉や知見、未来への警鐘とは―。 「なぜ私たちが存在しているのか?」 これは実は、現代の物理学で説明できない究極の謎です。 私たちの体、地球、そして太陽や銀河。これらは全て「物質」でできていますが、宇宙が誕生したときには「物質」とともに、“物質を鏡に写したような”真逆の性質を持つ「反物質」が同じ数だけ生まれたとされています。この「物質」と「反物質」は互いにぶつかると、光になって「消滅」してしまう性質があるため、本来なら現在の宇宙には何も残っていないはずな
アクシオンとは、ニュートリノやミラーマターなど共にダークマターの正体の候補に数えられている未発見の素粒子です。そんなアクシオンが、「宇宙が現在の姿になった理由」などの大きな難題を解く鍵になるとの学説が発表されました。 [1910.02080] Axiogenesis https://arxiv.org/abs/1910.02080 'Axion' particle solves three mysteries of the universe -- ScienceDaily https://www.sciencedaily.com/releases/2020/03/200310114721.htm Hypothetical particle explains three major mysteries of the universe https://newatlas.com/physics/
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Rosario et al. 私たちがいま生きている現実の世界は、もしかすると幻想なのかもしれない、そんな物理学の学説があります。遠い宇宙の果てにある球面に刻まれた情報(データ)を投影したものが、ここにある現実の世界なのだと。この突拍子もない学説は「ホログラフィック理論」と呼ばれ、物理学を研究する多くの科学者に支持されています。私たちの存在が幻影? そんな奇妙な話がありうるのでしょうか? 今回から2回続けて、「ホログラフィック理論」とは何かを追ってみたいと思います。 それはブラックホールから始まった 人間は何の変哲もない日常に身を置いているときは、あまり疑問を感じません。でも、日常とはかけ離れた奇異なるもの、不思議なものに出会うと、とたんに頭の中に「?」が生まれます。「これは一体何?」「なぜこんなものが存在するの?」と
by Frank DeFreitas アメリカ・イリノイ州に本拠を置くフェルミ国立加速器研究所が、世界で最も高感度なレーザー干渉計である「ホロメーター」を用いて、「我々の宇宙は、別の宇宙から投影されたホログラムなのではないか」という学説の検証を行い、「この世界がホログラムなのか」ということの確認を終えました。ホロメーターの検証結果によれば「我々はホログラムの世界に生きているわけではない」とのこと。 Holometer rules out first theory of space-time correlations - News http://news.fnal.gov/2015/12/holometer-rules-out-first-theory-of-space-time-correlations/ Holometer rules out first theory of space-
「私たちがいま生きている現実の世界は、もしかすると幻想かもしれない」。こんな突拍子もないことを主張する物理学の学説があります。「ホログラフィック理論」というものです。一般の感覚ではとうてい理解しがたいこの学説は、ブラックホールの謎の解明を通して生まれてきました。なぜ、こんな不思議な学説が誕生し、最先端をゆく物理学者たちに支持されているのか。3月18日公開のコラム(前編)に続き、今回は後編をお届けします。 ブラックホールの謎 太陽の30倍以上もある大きな恒星が「死」を迎えると、自らの巨大な重力で内側に向かって崩壊が始まります。自分の重さで自分を押しつぶし、どこまでも星は圧縮され続け、ほとんど無限の密度を持つ一点にまで凝縮されます。想像を絶する巨大な重力の影響で、この「点」からは光すら脱出できません。外からは見ることができない「ブラックホール」が誕生するのです。 光すら飛び出せない「ブラックホ
「ホログラフィック原理」と呼ぶ理論によると,宇宙は1枚のホログラムに似ている。ホログラムが光のトリックを使って3次元像を薄っぺらなフィルムに記録しているように,3次元に見える私たちの宇宙はある面の上に“描かれた”ものだ。はるか遠くの巨大な面に記録された量子場や物理法則と,私たちの宇宙とは完全に等価だ。 ブラックホールの研究を通じて,ホログラフィック原理の正しさを示す手がかりが得られた。常識に反して,ある空間領域のエントロピー(情報量)は,領域の体積ではなく表面積によって決まることがわかった。この驚くべき発見は「究極理論」を目指す研究のカギになるだろう。 物質がブラックホールに落ち込んで消え去るとエントロピーも永久に失われ,熱力学の第2法則が破れてしまうように見える。私(ベッケンスタイン)は英ケンブリッジ大学のホーキング(StephenW. Hawking)らの研究成果にヒントを得て,「ブラ
宇宙の全歴史を365日にたとえると「人類誕生」は大晦日の11時…は大間違い! 3分で読める宇宙誕生から終焉まで 138億年の宇宙の歴史を365日に置き換えると、現生人類が誕生したのは大晦日の午後11時52分にあたるそうです。 しかし、「ビッグバンから138億年後という現在は、宇宙の歴史において何らかの到達点でも、節目の年でもない」と吉田伸夫さんはいいます。 宇宙が真の終焉に達するのは「10の100乗年」後であり、「ビッグバンから138億年しか経っていない現在は大晦日どころか、元日の午前0時0分0.000…004秒頃(「…」では0が77個ほど省略されています)」だというのです。 誕生から真の終焉までの「宇宙全史」はいったいどのようなもになるのでしょうか? ベストセラー『宇宙に「終わり」はあるのか』より、「10の100乗年」をぎゅっと圧縮した名解説「2ページで語る宇宙全史」を完全公開いたします
物理学が未だに説明できていない問題現在、物理学にはまったく異なる2つの理論が存在し、どちらも大きな成功を収めています。 その2つの理論とは、量子力学と一般相対性理論です。 量子力学は、自然界を支配する4つの基本的な力のうち、3つの力(電磁気力、弱い力、強い力)を微小な世界で記述することに成功しました。 ただ、重力についてはまだうまく説明することができていません。 一方、一般相対性理論は、これまで考案された中でもっとも強力で完全な重力の記述方法です。 しかし、一般相対性理論にも不完全な部分があり、この世界で2つのポイントについてだけ理論が破綻しています。 それが「ブラックホールの中心」と「宇宙の始まり」です。 ここについては、一般相対性理論でも計算が破綻してしまい、信頼できる結果を得ることができません。 そのため、これらの領域は「特異点」と呼ばれていて、現状の物理理論が及ばない時空のスポット
広島大学は、電気回路において擬似的なブラックホールを創生し、それを用いたレーザー理論を構築することに成功し、現在の技術では実際のブラックホールでの観測が不可能なホーキング輻射を観測可能にし、一般相対性理論(重力)と量子力学を統一する「量子重力理論」の完成に向けた取り組みを加速することになると発表した。 同成果は、広島大大学院 先進理工系科学研究科の片山春菜大学院生によるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。 自然界に存在する電磁気力、強い力、弱い力、重力の4つの力をすべて統一できるとされる超大統一理論は、重力を扱う一般相対性理論と、量子の世界を扱う量子力学を結びつけることができれば完成するとされることから、「量子重力理論」などとも呼ばれるが、重力と量子の世界は折り合いが悪く、その統一は困難とされ、4つの力の統一にはまだ長い時間がかかるとさ
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