群馬大学医学部附属病院で腹腔鏡手術を受けた患者8人が、相次いで死亡していた。 2014年、読売新聞のスクープ記事から、医学界を揺るがす大スキャンダルが明らかになる。亡くなった患者・8人の手術は、いずれも早瀬(仮名)という40代の男性医師が執刀していた。院内調査によって、開腹手術でも10人が死亡していたことが発覚。技量の未熟な早瀬が、超一流外科医でも尻込みすると言われた高難度の最先端手術に挑んだのはなぜなのか。 「白い巨塔」の病理と、再生への道のりを、話題書『大学病院の奈落』(高梨ゆき子)より取り上げる。 遺族は何も知らなかった 立っているだけで汗がにじむようなあの日、群馬大学病院で不可解な手術死が続発している、という重大な情報の端緒をつかんだ。 社会部で厚生労働省を担当したことから医療の分野にかかわり始め、のちに医療部に移って臨床現場の取材を手がけるようになっていた私は、この年四月、週刊誌