なぜ江戸時代の人たちはネズミをかわいがったのか 鼠は、一般に、人家に害を与えるので憎まれていたのだが、その姿や挙動の可愛いさもあって愛玩動物ともなっていた。鼠にもさまざまなタイプがあって、主には人家の周辺にたむろして台所の食べ物を狙ういわゆる「イエネズミ」(クマネズミ、ラットであるドブネズミ、マウスであるハツカネズミの3種)と、野外のみに棲息する「ノネズミ」(ハタネズミやアカネズミなど)がいる。 前者は貯食性・貯脂肪性が低いため、屋外の食物が不足するとヒト社会に入り込むが、後者はもっぱら畑の作物を食べていてヒト社会とはやや疎遠である。イエネズミは屋根裏の器物や衣類を齧ったり蔵の中の穀類を食べたりして広がった。もともと人間とは棲み分けしていたのだが、農業社会が発達するにつれ備蓄食料が増えたことから、鼠とヒト社会との接点が増え、鼠の生息圏が人間界にも及んできたのであった。 都市化が進行した室町