タグ

ブックマーク / www.aozora.gr.jp (3)

  • 知里幸惠編訳 アイヌ神謡集

    序 その昔この広い北海道は,私たちの先祖の自由の天地でありました.天真爛漫な稚児の様に,美しい大自然に抱擁されてのんびりと楽しく生活していた彼等は,真に自然の寵児,なんという幸福な人だちであったでしょう. 冬の陸には林野をおおう深雪を蹴って,天地を凍らす寒気を物ともせず山又山をふみ越えて熊を狩り,夏の海には涼風泳ぐみどりの波,白い鴎の歌を友に木の葉の様な小舟を浮べてひねもす魚を漁り,花咲く春は軟らかな陽の光を浴びて,永久に囀(さえ)ずる小鳥と共に歌い暮して蕗(ふき)とり蓬(よもぎ)摘み,紅葉の秋は野分に穂揃うすすきをわけて,宵まで鮭とる篝(かがり)も消え,谷間に友呼ぶ鹿の音を外に,円(まど)かな月に夢を結ぶ.嗚呼なんという楽しい生活でしょう.平和の境,それも今は昔,夢は破れて幾十年,この地は急速な変転をなし,山野は村に,村は町にと次第々々に開けてゆく. 太古ながらの自然の姿も何時の間にか影

  • グリム 中島孤島訳 ラプンツェル

    むかしむかし夫婦者(ふうふもの)があって、永(なが)い間(あいだ)、小児(こども)が欲(ほ)しい、欲(ほ)しい、といい暮(くら)しておりましたが、やっとおかみさんの望(のぞ)みがかなって、神様(かみさま)が願(ねが)いをきいてくださいました。この夫婦(ふうふ)の家(うち)の後方(うしろ)には、小(ちい)さな窓(まど)があって、その直(す)ぐ向(むこ)うに、美(うつく)しい花(はな)や野菜(やさい)を一面(めん)に作(つく)った、きれいな庭(にわ)がみえるが、庭(にわ)の周囲(まわり)には高(たか)い塀(へい)が建廻(たてまわ)されているばかりでなく、その持主(もちぬし)は、恐(おそ)ろしい力(ちから)があって、世間(せけん)から怖(こわ)がられている一人(ひとり)の魔女(まじょ)でしたから、誰一人(たれひとり)、中(なか)へはいろうという者(もの)はありませんでした。 或(あ)る日(ひ)の

    shidehira
    shidehira 2010/04/23
    おはなし
  • 島田清次郎 地上 地に潜むもの

    大河平一郎が学校から遅く帰って来ると母のお光は留守でいなかった。二階の上り口の四畳の室の長火鉢の上にはいつも不在の時するように彼宛ての短い置手紙がしてあった。「今日は冬子ねえさんのところへ行きます。夕飯までには帰りますから、ひとりでごはんをたべて留守をしていて下さい。母」平一郎は彼の帰宅を待たないで独り行った母を少し不平に思ったが、何より腹が空(す)いていた。彼は置かれてあるお膳の白い布片を除けて蓮根の煮〆に添えて飯をかきこまずにいられなかった。そうして四、五杯も詰めこんで腹が充ちて来ると、今日の学校の帰りでの出来事が想い起こされて来た。今日は土曜で学校は午前に退(ひ)けるのだった。級長である彼は掃除番の監督を早くすまして、桜の並樹の下路(したみち)を校門の方へ急いで来ると、門際で誰かが言いあっていた。近よってみると、二度も落第した、体の巨大な、柔道初段の長田が(彼は学校を自分一人の学校の

    shidehira
    shidehira 2007/01/31
  • 1