若き日の衣笠祥雄さんはカープファンから忘れられない言葉をかけられたそうだ。前人未踏の2215試合連続出場を果たした「国民栄誉賞」のヒーローは、引退から四半世紀以上経っているのに昨日のことのようにありありと振り返った。 「僕、こたえるひと言をいただいたことがあるんです。『本当は、自分がグラウンドでプレーしたいんだ。でもそれがかなわないから、代わりにあなたを応援している。だから、頑張ってくれ』と。原爆投下からわずか4年で設立し、市民が募金で守り抜いたチーム。ファンも熱いんです。だから、そのファンの気持ちに応えられる姿をグラウンドで出さなきゃいけない。ファンの代表として僕はプレーさせてもらってるんです。真剣に、目を見て言われました。わがまま言ったり浮かれたりしてはいけないなと思いました」 インタビューなのにしばらく次の質問が出て来なかった。不覚にも涙が出そうになる。本当に衣笠さんはそう思って生き