所得格差はなぜ悪か。それは、生きるため、くらすために必要なサービスを利用できない人を生むからだ。貧乏な家に生まれたという理由だけで病院や大学にいけない社会は理不尽である。理(ことわり)に従って生きるのが学者である以上、僕はそんな社会をだまって見過ごすわけにはいかない。 これが自著『幸福の増税論』のなかで「ベーシックサービス(BS)」を提唱した理由だ。医療・介護・教育・障害者福祉、これらの誰もが必要とする/しうるサービスをBSと定義し、所得制限をつけず、すべての人たちに給付する。つまり、幼稚園や保育園、大学、医療、介護、障害者福祉、すべてを無償化するという提案だ。 これは単なる思いつきではない。近世の共同体では、警察、消防、初等教育、介護といった様々な「サービス」を、全構成員が汗をかきながら、みんなで提供しあってきた。みんなの需要をみんなで満たしあう、この「共同需要の共同充足」の原理を国のレ