ウクライナ西部の街、リビウから寝台列車に揺られること4時間。緑豊かな山々を抜ける列車の車窓から、ときおり透き通った小川が見え隠れする。国立自然公園を横切りたどり着いたのは、石造りの家々が歴史を感じさせるザカルパッチャ州、ムカチェボ駅だ。 「カルパッチャ山脈の向こう」という意味のザカルパッチャ州は、チェコスロバキア領だった時代を除けば、中世から20世紀半ばまでハンガリーの領土に組み込まれていたため、ハンガリー系の住民たちも多く暮らしている。 ロシアの軍事侵攻によって、ウクライナ国内の避難民が700万人を超える中(2022年6月現在)、多くの人が、比較的安全な地域だと認識されているザカルパッチャ州を目指した。元々の人口約130万人の州に、侵攻開始後2週間ほどで50万人を超す人々が他の地域から避難してきたことが報じられている。ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニアの4ヵ国の国境に接し、常