第1節 揺れ動く日本経済 本節では、震災ショックにより急変動した経済の動きを概観した後に、長引くデフレの現状を詳しく検証する。その後、需給ギャップを求める際に計算している我が国経済の潜在成長率の長期的な推移を振り返り、その伸び率が鈍化した局面の背景を検証する。併せて、震災が潜在成長力に与えた影響についても検討する。 1 概観 まず、概観では、経済全体の動きを示すGDP統計や景気動向指数の動きを確認し、主な需要項目毎にみられる特徴を確認する。 (3四半期ぶりにプラスを記録したGDP統計) 我が国経済は2009年第1四半期を底にして持ち直し過程に転じたが、震災により、実質GDPは2011年第1四半期から2四半期連続の減少となった。震災は3月に発生したため、まずは第1四半期の落ち込みに反映され、2011年第2四半期は、期中に内需が持ち直したものの、外需は大幅なマイナスを記録した。続く第3四半期は
7月にオリンパスのM&Aに関する疑惑をいち早く報じたとされる月刊FACTA。しかし、ゴールドマンサックスはFACTAの記事が出る前から、オリンパス株を空売りしていたのである。 先週、筆者が気になった記事があった。それは「オリンパス株で約20億円の利益……ゴールドマンのすごすぎる手口」。マイケル・ウッドフォード氏が社長を解任される前から空売りをかけ、11月初旬に買い戻して20億円ほどの利益を得たという内容である。 金融業界でその名をとどろかせるゴールドマンサックス。後学のためにその手口を詳しく分析しようと、東証が公開している空売り残高状況(参照リンク)をチェックしたところ興味深いことが分かった。ゴールドマンサックスは、かなり早い段階からオリンパス株を空売りしているのである。 データによると、ゴールドマンサックス(正確にはGOLDMAN SACHS INTERNATIONAL)が最初に空売りを
と題したMRエントリ(原題は「If true we are doomed」)でタイラー・コーエンが、「Global Banking Glut and Loan Risk Premium」というHyun Song Shin論文を紹介している。元のポインタはクルーグマンで、コーエン以外にはデロングが同論文にリンクしたほか、ケビン・ドラムがその内容を簡単に要約している。 各人が注目したのは、欧州の銀行が米国に多額(2007年のピーク時で約5兆ドル)の貸付を行っている、というShinの分析。それが本当だとすると、欧州の銀行がデレバレッジで貸出の縮小に走れば、米国も甚大な影響を受けることになる、というわけだ。 Shinはその貸出のスキームを以下の模式図で表わしている。 ここで話をややこしくしているのが、欧州の銀行の米国法人が調達した資金が、いったん本国の本店に渡り、その後にシャドウバンキングを通じて
●Nick Rowe, “Why an excess demand for money matters so much”(Worthwhile Canadian Initiative, May 02, 2009) 例えば、ここでアンティーク家具に対する超過需要が存在すると想定することにしよう。アンティーク家具(の売買)はGDPの一部として計上されることはない。ワルラス法則によれば、アンティーク家具に対する超過需要が存在すれば、それと同規模の超過供給―例えば、新たに生産された財(newly-produced goods)の超過供給―がどこかで生じることになるはずである。さて、アンティーク家具に対する超過需要は、一般的な供給過剰(a general glut)ならびに総需要や雇用の低下、そして不況をもたらし得るだろうか? 結論を述べると「もたらし得ない」のであるが、それはどうしてなのだろうか?
●Nick Rowe, ""But where will the demand come from?" In praise of older Keynesians"(Worthwhile Canadian Initiative, February 04, 2011) 不景気のたびに尋ねられる質問がある。景気が回復するためには需要の増加が必要であるが、「しかしながら、需要はどこからやってくるのでしょう?」、と。 私がまだ若くて愚かであった頃なら、「「住宅」("housing")部門から」と答えることだろう。この回答は過去に関していうとかなり妥当な推測であると言えるだろう。しかし、少しばかり年をとり幾分か偏屈にもなった今の私はこの質問に直接回答することは拒み、次のような反応を返すことだろう。 「私のようなアームチェア・エコノミスト(象牙の塔に引き籠ってのうのうとしている経済学者)がその答えを知
少し前に、カバレロがFTのThe Economists' Forumに「Economic witch-hunting」と題した記事を寄せていた(Economist's View経由)。 内容は、本ブログで以前ここやここで紹介した彼の考えの繰り返しという感もあるが、今回の危機の原因に関する彼の考えがより明確に述べられているので、以下に簡単にまとめてみる。 グローバル・インバランスとレバレッジを今回の危機の原因とするのは皮相的な見方に過ぎず、魔女狩りのようなものである。 グローバル・インバランスは先入観の犠牲である。多くの経済学者や評論家が、危機発生の前に、米国への資本の流入が逆流したら、米国経済は崩壊するだろう、と予測していた。しかし、いざ危機が発生してみると、資本は質を求めて米国内に留まり、むしろ米国経済の安定に寄与した(確かにそうした資本が民間資産から[国債などの]公的資産に移されたこと
今日(2011/11/3)の『日本経済新聞』朝刊の経済2面に「国際市場、ドル調達不安 欧州銀は一段と厳しく」という記事が載っている。この種の話題はこの間ときどき取り上げられているけれども、そもそも、どうして欧州の金融機関が(ユーロ建てではなく)ドル建ての資金を大規模に調達する必要があるのだろうか? その理由は、実は2007年以降の米国発の金融危機と深く関連している。 2007年以降の金融危機は、最初はいわゆるサブプライム・ローン問題として始まった。そのこともあって、当初は危機の原因は「証券化」にあるという見方が有力になった。すなわち、証券化に典型的なオリジネート・ツゥ・ディストリビュート(originate to distribute、組成だけして、後は転売してしまう)というビジネス・モデルのゆえに、野放図なリスク・テイクが行われたというのである。 「証券化商品の場合には売却して投資家にリ
2011/11/210:45 「アノニマス」の歴史とその思想 塚越健司 「アノニマス(Anonymous)」。それは英語で「匿名」を意味する集団である。奇妙な仮面を被り、ネット上で高らかと攻撃を宣言し、実際にデモに参加することもある。2011年4月には、ソニーの運営する「プレイステーション・ネットワーク」を攻撃したことでも知られる彼らは、しばしばメディアで「ハッカー集団」という言葉で形容されているが、これはじつは正しくない。 ■アノニマスの起源 アノニマスとは特定の人物を指す言葉ではなく、「ネットの自由」という大義を共有する緩やかな組織団体だと言われている。彼らの起源はアメリカの4chanという巨大画像掲示板にある(4chanは日本の画像掲示板「ふたば☆ちゃんねる」を模したもの)。この掲示板に書きこむ際のデフォルトのハンドルネームがアノニマス(匿名)であり、日本の巨大掲示板2ちゃんねる上に
いまさら言うまでもないことだが、現在大震災による被害および原発事故で、生産者が深刻な状況に追い込まれている。 特に、食物の放射能汚染に関する「風評被害」に関しては、関谷直人氏による問題点をコンパクトにまとめた良書(『風評被害 そのメカニズムを考える (光文社新書)』)が出ているほか、下記のウェブ記事で、経済学者の安田洋祐氏が情報の経済学を援用した風評被害に対する処方箋を提供している。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110817/222101/ もちろん、ここで指摘されていること、とくに生産者からの情報開示を進めるためにシグナリングのコスト=放射能汚染の計測にかかる費用を政府が負担すべきだ、という点は現実的にも非常に重要だと思う。ただ、この問題が深刻なのは必ずしも「情報の非対称性」が解消されればそれで解決される、というものでは
16日エントリでは、規制監督上の不確実性が景気を冷やしているという見解をクルーグマンが嘲笑した、という話を紹介した。もう少し詳しく説明すると、EPI(Economic Policy Institute)所長のLarry Mishelがそうした見解を否定するレポートを発表したところ、AEIブログでJames Pethokoukisがそれに反論し、さらにMishelがそれに再反論した。そのやり取りに目を付けたクルーグマンがAEI側を嘲笑した、というのが事の経緯である(ちなみに、この一件にはマイク・コンツァルも反応している[デロング経由])。 また、MishelはThe AtlanticのClive Crookともやり合っている(デロング経由)。Crookが(本ブログの17日エントリで紹介した)Scott R. Baker、Nicholas Bloom、Steven J. Davisの研究を持ち
永田町では、TPP(環太平洋パートナーシップ)をめぐる騒動が盛り上がってきた。全国農業協同組合中央会は25日、TPP反対請願を衆参両院議長に提出したが、この請願書には「紹介議員」として与野党の356人の氏名が記載されている。民主党では「TPPを慎重に考える会」が国会議員199名の署名を集め、自民党の谷垣総裁も慎重姿勢を見せ、公明党は反対の姿勢を表明した。 以前のコラムでも書いたように、TPPの農業への影響はGDP(国内総生産)の数百分の一。環太平洋の自由貿易圏を構築することは1990年代からの既定方針で、今さら国を挙げて議論するような問題ではない。不可解なのは、こんな小さな経済問題がこれほど大きな政治問題になるのはなぜかということだ。 よくいわれるのは「農村票は固いので、数が少なくても政治家は恐い」とか「1票の格差が農村に有利になっている」という話だが、農家は人口の3%に満たない。しかもそ
中国に押しつぶされる米国の太陽電池業界、次は日本か:世界の再生可能エネルギー(3)(1/2 ページ) 太陽電池を製造する米国企業7社がダンピングを理由に中国企業を提訴した。太陽電池産業は成長市場のはずだ。米国では何が起こっているのか。中国企業と米国企業の強みは。NRELの分析に基づき、状況を紹介する。 米国内の太陽電池メーカー7社は、2011年10月18日(現地時間)、中国製の太陽光発電システムが不当廉売(ダンピング)状態にあり、米国の雇用を脅かしているとして米商務省と国際貿易委員会(ITC)に提訴した。2011年に入り、太陽電池関連の米国企業倒産が相次いでいる。米国の太陽電池産業に何が起こっているのだろうか(連載の前回へ)。 今回の提訴の主体となっているのはドイツSolarWorldの米国法人、SolarWorld USAだ。同社の主張はこうだ。中国企業には生産コスト面での優位性がないに
いまユーロはギリシャ問題を解決できずに、経済危機的な様相を呈しており、アメリカでも景気再後退の懸念が強まっている。そういう状況下で、野田政権がまず震災の復興財源として、増税を決定した。さらに、社会保障の財源として、消費税の引き上げをどうするかついても、本格的な議論が始まる。今回は、経済成長重視派の二人の論客に、この増税路線が経済政策として、妥当なものであるどうかについて、語り合ってもらった。第1回目ではなぜ済成長が必要なのか、日本の財政状況は、果たしてギリシャと同じように、危機的な状況にあるのかどうかについて検証する。(撮影/宇佐見利明) 経済成長がなければ いま抱えている課題の解決は難しい ――最初に、大変基本的なことですが、なぜ経済成長が必要かについて、お二人の意見を聞かせてください。世界的にみれば、日本はもう十分豊かなので、経済成長は必要ない、定常的な社会を前提にして、課題の解決に取
「日本ではエヴァが流行ってたじゃない? あれってやっぱり当時の日本人の鬱屈した社会観や、停滞している人間関係を投影したものなんでしょ?」 「ごめん、エヴァ観てないんだ」 「どうして? コンテンツ投資が君の本業でしょ? 何で観ていないの。観るべきだ。日本人なら皆エヴァに関心があって、影響を受けているものだと思ってた」 「それならイギリス人は皆ビートルズを聴いて育ったとでも言うのか?」 「でも日本のポップカルチャーの中心はビッグヒットのアニメであるべきだよ。日本人の政府関係者がクールビジネス(おそらくクールジャパンのこと)を成長の根幹に据えると言ってる」 「コンテンツ会計でいうと、ここんとこ日本のアニメ輸出はずっと伸び悩んでて、停滞しっぱなしなんだけど」 「どうして。それは日本人がコンテンツを生み出して外に売っていく意欲を失ったからなのか?」 「単純に電通出身のジェネオン社員がこぞってワーナー
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