身に覚えのない万引きの非行歴を理由に私立高校への推薦を断られ、後に自殺した中学3年の男子生徒は、救えなかったのか。1年生当時の「冤罪(えんざい)」はどうつくられたのか。周囲はなぜそれに気づけなかったのか。救済の機会は、何度もあった。 昨年11月半ば、広島県府中町の町立府中緑ケ丘中学校。校舎2階の教室前の廊下で、担任の女性教諭は男子生徒と向き合った。 (担任)「万引きがありますね」(男子生徒)「えっ」(担任)「3年ではなく、1年の時だよ」(男子生徒)「あっ、はい」 学校の調査報告書は担任の証言をもとにやりとりを再現した。担任は2年前の誤った生徒指導記録をふまえ男子生徒が万引きをしていたと思い込み、このやりとりで認めたと受け止めたという。12月まですべて教室前の廊下で行われた5回の面談で、誤認が改まることはなかった。 このころ、学校は3年時に万引きなどの触法行為があれば私学に推薦しないという基