持ち出せなかった戸籍データ 今まで経験したことがない長く大きな揺れ。 町役場にいた佐藤さんは地震が収まったのを見計らい、まずはすぐ戸籍システムの電源を落とした。そして急いで戸籍関連の書類を保管していた頑丈な金庫に鍵をかけた。 「職員は防災対策庁舎に避難するように」との指示があり、戸籍住民係3人で防災対策庁舎2階の危機管理室に避難した。危機管理室には戸籍のサーバーがあった。 そこから佐藤さんを含む職員の幾人かは付近の高台にて避難民の誘導にあたることになった。 移動のため防災対策庁舎の階段を降りる際、「万が一のことがある。一旦本庁舎に戻ってバックアップテープと戸籍届出書を持っていくべきではないか」との思いが頭をかすめる。 「戻って取ってくるから」 その声に、上司である課長は避難誘導を優先するべき、との判断を下す。佐藤さんは迷いながらもそれに従った。 佐藤さんの頭には「戸籍法の規則で戸籍簿等は庁