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ブックマーク / realsound.jp (90)

  • 日本のアニメは世界でどう評価? 『夜明け告げるルーのうた』アヌシー映画祭最高賞受賞から考察

    世界最大規模、最古の歴史を誇る、フランスの「アヌシー国際アニメーション映画祭」。このほど、湯浅政明監督の『夜明け告げるルーのうた』が、その長編部門最高賞となる「クリスタル賞」を受賞した。日作品の長編部門最高賞は、1995年の高畑勲監督による『平成狸合戦ぽんぽこ』の受賞以来、22年ぶりの快挙である。また、片渕須直監督の『この世界の片隅に』が同部門の審査員賞を受賞しており、2017年は日のアニメーション映画海外で大きな注目を集める年になったといえるだろう。 この結果に対して、疑問を感じる人もいるかもしれない。まず、「アニメ大国」といわれる日の長編作品が、何故この長い間、長編最高賞の受賞を逃していたのか。そして、国内で客足が伸びず、ほとんどの劇場が早々に上映を打ち切った『夜明け告げるルーのうた』が、何故ここまで高い評価を得たのかという点である。ここでは、その謎を解明しつつ、同時に日のア

    日本のアニメは世界でどう評価? 『夜明け告げるルーのうた』アヌシー映画祭最高賞受賞から考察
  • 青春アニメ、なぜ地方の町ばかり舞台に? 『打ち上げ花火~』の独自性に迫る

    1993年にTVドラマの1エピソードとして放映された岩井俊二監督の同名の人気作品を、24年経ってアニメ映画化した『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』。『君の名は。』を大ヒットに導いた川村元気プロデューサー、脚のみの仕事に初挑戦した、映画監督・映像ディレクターの大根仁、そして『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズの監督・新房昭之らが、原作の要素から新たに内容を解釈し直した作品だ。 花火という要素を中心に、ある少女に惹かれていく少年の夏の一日を描いた作を観ながら、ぼんやりと意識にのぼっていたのは、このように田舎の町を舞台に、学生の青春を映し出した光景を、劇場アニメのなかで最近何度見ただろうかということだった。『夜明け告げるルーのうた』、『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』、『聲の形』など、地方の中高生の物語が相次いで描かれている。もちろんこれらの作品は、新海誠監督の『君の名は。』が

    青春アニメ、なぜ地方の町ばかり舞台に? 『打ち上げ花火~』の独自性に迫る
  • 『キンプラ』はなぜ「応援上映」が好まれる? ファンが共有する刹那のきらめき

    「すごくカルチャーショックでした。“アニメ”とか“映画”とかの常識を越えていて、終わった後は放心状態でした。上映中はずっと笑っちゃっていたんですが、隣の席の女性は泣いており、その差にびっくりしました」。『キンプラ』を若い女性編集者に勧めたところ、映画畑である彼女には相当の衝撃を与えたらしい。 現在、『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』通称『キンプラ』が熱狂的なファンをつけて絶賛上映中だ。前作『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(『キンプリ』)は、「裸の男の子が笑いながら無数に飛び出してくる」「尻からはちみつが飛び出す」などの不思議シーンと、観客がキャラクターに向かってサイリュームとかけ声でエールを送る「応援上映」も含めて大きな話題になった。 今作の『キンプラ』は前作以上にパワーアップ。仁王像が立つステージをバックに、アイドルが竜や虎を召

    『キンプラ』はなぜ「応援上映」が好まれる? ファンが共有する刹那のきらめき
  • 小野寺系の『メアリと魔女の花』評:“ジブリの精神”は本当に受け継がれたのか?

    近年、新作を作る度の風物詩となっていた、宮崎駿監督の「長編引退宣言」。『風立ちぬ』完成時にも、人が「またかと思われるかもしれませんが、今回はマジです」と言いながら、その後また撤回されたわけだが、スタジオジブリの製作部門は、復帰宣言の前に当に解体されてしまった。 『魔女の宅急便』で動員数200万人を突破してから、安定的に大ヒット作品を連発、「ジブリブランド」を確立し、国内の劇場アニメのシェアを握ることになっていった、スタジオジブリと宮崎駿。スタジオ解体という状況のなかで、日の多くのアニメーションスタジオは、その王国に成り代わることを望み、アニメーション監督は、「ポスト宮崎」という玉座をねらう事態が起きている。 そこで注目されていたのが、スタジオポノックである。『思い出のマーニー』でコンビを組んだ西村義明プロデューサーと米林宏昌監督、従業員の8割がジブリの作品づくりに関わってきた人たちが

    小野寺系の『メアリと魔女の花』評:“ジブリの精神”は本当に受け継がれたのか?
  • 宮台真司×中森明夫が語る、世の摂理を描き切る映画の凄味  『正義から享楽へ』対談(後編)

    社会学者・宮台真司の映画批評『正義から享楽へー映画は近代の幻を暴くー』の刊行を記念し、著者・宮台と作家/アイドル評論家・中森明夫のトークショーが、2月20日にLOFT9 Shibuyaにて開催された。リアルサウンド映画部では、2人がの内容から話題の社会問題までを語り尽くした当日のトークイベントの模様を、両人の確認・加筆の上、前後編の2回にわたって掲載。 前編:宮台真司×中森明夫が語る、映画と社会の現代的難点 『正義から享楽へ』対談(前編) 中森:ネットで突っ込まれたくらいで“どうしよう”というヤツだと、たちまち正しさの方に巻き込まれてしまう。若い人はそれに弱いと思うんですよ。スポーツ界では、羽生結弦とか、大谷(翔平)とか、松山(英樹)とか、世界に通用する若い人が出てきているけど、例えば映画の分野を見ると、庵野(秀明)さんとか、片渕(須直)監督とか、あるいは岩井俊二とか、結局僕ら世代じゃ

    宮台真司×中森明夫が語る、世の摂理を描き切る映画の凄味  『正義から享楽へ』対談(後編)
  • 宮台真司×中森明夫が語る、映画と社会の現代的難点 『正義から享楽へ』対談(前編)

    社会学者・宮台真司の映画批評『正義から享楽へー映画は近代の幻を暴くー』の刊行を記念し、著者・宮台と作家/アイドル評論家・中森明夫のトークショーが、2月20日にLOFT9 Shibuyaにて開催された。リアルサウンド映画部では、2人がの内容から話題の社会問題までを語り尽くした当日のトークイベントの模様を、両人の確認・加筆の上、前後編の2回にわたって掲載する。 中森:『正義から享楽へ』は映画であることに加えて、今を読み解く時代論としても出色だと思いました。1年だけでこの文量、しかも最新の映画だけでなく過去作も参照しつつ書き上げてしまうすごさを感じましたね。僕なんか2年に1冊くらいだから(笑)。最初に聞きたかったのが、『ダ・ヴィンチ』での映画連載をまとめた『<世界>はそもそもデタラメである』が、何年前でしたか? 宮台:十年前の2008年です。01年から連載を始め、終えたのが08年。8年間

    宮台真司×中森明夫が語る、映画と社会の現代的難点 『正義から享楽へ』対談(前編)
  • 東京国際映画祭ディレクターが語る、日本映画界の課題「多様性が失われているのでは」

    スペースシャワーTVの高根順次プロデューサーによる連載「映画業界のキーマン直撃!!」第10回は、東京国際映画祭(以下、TIFF)にて作品選定ディレクターを務める矢田部吉彦氏にインタビュー。TIFFの社会的な役割から、日映画界が抱える問題点や、昨今のアニメ映画の流行についてまで、忌憚のない意見を語ってもらった。(編集部) 「日らしい文化が映り込んでいることが期待されてしまう」 ーー矢田部さんは元銀行員なんですよね? どんな経緯で東京国際映画祭(以下、TIFF)のプログラミングを? 矢田部:映画仕事がしたいと思い始めたのは、銀行の社内留学制度を利用してイギリスのロンドン郊外にある大学に留学したのがきっかけです。大学キャンパス敷地内の映画館は良いプログラムが組まれていて、とても面白かったんですけれど、ほとんどの作品は日未公開だということに改めて気付いてしまったんです。そこで、もし海外

    東京国際映画祭ディレクターが語る、日本映画界の課題「多様性が失われているのでは」
  • 『君の名は。』の大ヒットはなぜ“事件”なのか? セカイ系と美少女ゲームの文脈から読み解く

    新海誠はアニメ界の「鬼っ子」的存在 新海誠監督の新作アニメーション映画『君の名は。』が、記録的な大ヒットを続けています。公開10日間ですでに興行収入が38億円を突破したといいますから、これはもはや2010年代のアニメ界におけるひとつの「事件」といってよいでしょう。今年の夏はさまざまな意味で「平成の終わり」を実感させられるニュースが相次ぎましたが、まさにアニメ界においても、名実ともにいよいよ「ポストジブリ」の新時代が到来したことを感じさせるできごとです。 しかも注目すべきは、今回のヒットが、内容的にもスタジオジブリやスタジオ地図(細田守)のように、老若男女、幅広い層から支持されているというよりは、10~20代の若者世代、とりわけ女性層に特化して受けているらしいという点です。この『君の名は。』をめぐる現在の盛りあがりには、ゼロ年代から新海作品を観続けてきたアラサーのいち観客として、いろいろと感

    『君の名は。』の大ヒットはなぜ“事件”なのか? セカイ系と美少女ゲームの文脈から読み解く
    akakiTysqe
    akakiTysqe 2016/09/08
    id:daisukewatanabe1982様。細田守も新海誠も貴方も私も高畑勲の掌の上で踊ってるだけかもhttps://twitter.com/akakiTysqe/status/707219719351185410ゼロ年代テン年代以前に、我々は昭和をアニメ以前の事を忘れさせられているのだという自覚無
  • 宮台真司の『シン・ゴジラ』評:同映画に勇気づけられる左右の愚昧さと、「破壊の享楽」の不完全性

    「行政官僚制の日常」と「破壊の享楽」 『シン・ゴジラ』(7月29日公開/庵野秀明監督)は想像外に興味深い映画でした。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012年)以降の庵野秀明監督の不発ぶりに加え、特撮監督が『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015年)で味噌をつけた樋口真嗣氏なのもあって、期待水準を高く設定していなかったこともあるかもしれませんが、間違いなくエキサイティングでした。 作は従来のシリーズと違って、ゴジラに主題的な重心がなく、かと言ってヒーローに焦点が当たる訳でもない。敢えて言えば「日の行政官僚制」が主人公で、そのパフォーマンスに焦点が当たります。その話は後で題にするとして、僕がこの作品を見る前に、どこに注目しようと思っていたのかについて話しましょう。キーワードは「破壊の享楽」になります。 この夏休み、僕の3人の子供たちは、AppleTVで利用できる定額制

    宮台真司の『シン・ゴジラ』評:同映画に勇気づけられる左右の愚昧さと、「破壊の享楽」の不完全性
  • 初代ゴジラの“呪縛”から逃れた『シン・ゴジラ』 モルモット吉田が評する実写監督としての庵野秀明

    公開3週目を迎えても『シン・ゴジラ』の勢いは依然、衰えを見せない。IMAX、MX4D、通常上映と、毎回環境を変えて観ていたが、この原稿を理由にまた劇場に足を向けてしまった。高圧縮の情報量、現実の反映、オマージュ、トリヴィア、語られないまま終わった謎への解釈など、まるで20年前の『新世紀エヴァンゲリオン』テレビシリーズ放送終了後から翌年の劇場版公開にかけての熱狂が再現されているようだ−−と言っては言いすぎだろうか。いずれにせよ、繰り返し観ることで細部を語る魅力が増す作品であることは間違いあるまい。 マイナスをプラスにさせる庵野秀明のアレンジ ここでは、〈庵野秀明にとってのゴジラ〉から話を始めてみたい。というのも、特撮好きなエヴァの監督というイメージから誤解されがちだが、これまで庵野はウルトラマンほどの熱狂をゴジラには見せていなかったからだ。『シン・ゴジラ』の原点となる第1作の『ゴジラ』(54

    初代ゴジラの“呪縛”から逃れた『シン・ゴジラ』 モルモット吉田が評する実写監督としての庵野秀明