3月6日、福田康夫首相が異例の行動に出た。官邸に日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)らを招き、春闘での賃上げを要請したのだ。財界のトップに労働者への分配を増やすよう、一国の総理が頭を下げる――。その光景は、この国の賃金がいかに異様な状況にあるかを示している。 日本の民間給与総額は実に8年連続の減少だ。年初からはサブプライムローン問題で変調したが、現在の景気拡大期間は「いざなぎ景気」を抜いて戦後最長の6年に達し、企業収益も5年連続の増益を記録している。 本来なら、これで給与が上がらないほうがおかしい。 ところがこの間、企業は獲得した付加価値の配分の比率を大幅に変えてしまった。賃金として労働者に配分する比率(労働分配率)を大幅に減らし、代わりに株主への配当や内部留保への配分を拡大させたのだ。 日本はいまだ途上国型の経済成長になっている。米国をはじめとする成熟した欧米先進国の実質