ロシア軍がウクライナに侵攻する前日の2022年2月23日。9千キロほど離れた米北西部のシアトル近郊で、ウクライナへのサイバー攻撃が察知された。 つかんだのは、マイクロソフト(MS)本社のサイバー攻撃を監視する部署「MS脅威インテリジェンスセンター」。ウクライナにある19の政府機関や、重要なインフラへの攻撃だった。 センターはすぐに「盾」をつくった。コンピューターの動作に不正を起こさせる「マルウェア」を特定するためのソフトをつくり、ウクライナに送る。3時間足らずのできごとだった。 「今回の戦争の最初の砲撃は、サイバー空間で放たれた。それを最初に目撃したのが我々だ」。MSのブラッド・スミス社長は5月、ロンドンでのイベントで胸を張り、過去の戦争の白黒写真を背に語った。 「(第1次世界大戦が起きた)1914年に人類の紛争は空へ、今年はサイバー空間へ移った」 米IT大手は、ロシアの侵攻前からウクライ