日本の食品大手「味の素」が2年前から、エジプトで1袋25ピアストル(約4円)のうま味調味料を食卓に広めようと挑んでいる。庶民の胃袋をつかむため、まずは首都カイロの貧民街を売り歩く。その徹底した「どぶ板営業」を同行取材した時のことだ。 場所は、カイロ中心部から程近いマンシェート・ナセル地区。車を降りた瞬間、辺りに漂うゴミの強烈な生臭さが鼻を突いて、思わず顔をゆがめてしまった。飛び回るハエを手で払いながら、エジプト人営業マンの後を追う。「こんな場所で売って、もうかるのか」。正直、そう思った。 だが、両脇に商店が並ぶにぎやかなスーク(市場)を歩き始めて、その疑念はすぐに消えた。調味料や食品を扱うほとんどの店で、店頭に味の素の文字が躍る。営業マンたちは店主と雑談しながら売れ行きを確認し、手際よく追加注文分の袋の束を陳列棚にかける。勤務歴1年のイブラヒムさん(24)は「今では道行く主婦に『どこに売っ