出生率のデータが公表されると、東京都はいつも最下位となる。にもかかわらず、若者は東京に集まる。出生率の高い地域から低い地域に人が動けば、日本全体として出生数が減り人口減少が加速する。全国から若い人を集めておきながら、次の世代を担う子どもたちを生み育てることのない東京は「ブラックホール」である。 このように、東京=「ブラックホール」論は理路整然としていて、とてもわかりやすい。東京の出生率が他の地域と比べて低いということも、人口移動において東京が転入超過であるということも統計的な事実だから、実証的にも非の打ち所がないように見える。 だが、はたしてこの話はどこまでもっともらしいのだろうか。どこかに見落としはないのだろうか。 前回は「東京は出生率が低い」という議論がなされるときに用いられる出生率の指標、すなわち合計特殊出生率とはどのようなものか、この指標を利用する際に注意すべきことは何かということ