兵器化される情動反応――2019年インドネシア大統領選挙にみる選挙テクノロジーの影 本名純 インドネシア政治・東南アジア地域研究・比較政治学 国際 #「新しいリベラル」を構想するために 直接選挙で国家リーダーを選ぶ国は少なくないが、世界でもっとも巨大な直接選挙を行う国は、アメリカでもインドでもなく、じつはインドネシアである。この国では1億9千万の有権者が直接大統領を選ぶ。世界最大の民主選挙の祭典だ。この5年に一度の大統領選挙が4月17日に実施された。その結果、現職のジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)の再選が決まった。国際社会は、文民大統領による初の長期安定政権の誕生に、祝福のエールを送った。 それには歴史的な意味がある。同国は30年以上のスハルト独裁時代(1966年〜98年)を経て民主化し、20年を迎えた。しかし民主化後に長期政権を実現したのはユドヨノ大統領時代(2004年〜2014年)だ