「日本の」じゃなくて「欧米のマンガ史」について知りたい、というひとがいたとしましょう。彼あるいは彼女は、なにか教科書になるようないい本はないか、とネットや図書館で検索してみるのですが、見つからない。 それも当然。現代日本には、欧米の、あるいは世界のマンガ史を通史として学べるような本は、存在しないのですね。 というか、かつて日本人によって書かれたこの手の本は、唯一、須山計一『漫画博物誌 世界篇』(1972年番町書房)があるだけ。訳本としてもジェラール・ブランシャール『劇画の歴史』(窪田般彌訳、1974年河出書房新社)、ただ一冊しか存在しません。 前者は「マンガ」のとらえ方が古くて、当時すでに欧米では研究が進んでいたロドルフ・テプフェールや『イエロー・キッド』、『リトル・ニモ』も完全無視、という本。こういうのが出版されてたんだという歴史的価値は別として現代読者にはおすすめしづらい。後者はそのあ