1.導入 一般にドローンと呼ばれる無人航空機は、生活物資の輸送や施設の点検といった形で我々の生活を支えると同時に、ロシア-ウクライナ戦争で見られるように戦場における有効な兵器としても用いられている。 利益と脅威というこの二面性のうち、後者は、遠い戦場での話として軍事問題に関心のある方以外には縁遠く感じられるかもしれない。しかし、ドローンの脅威はすでに戦場から遠く離れた都市にまで及んでおり、電気・ガス・交通といった我々の生活を支える都市インフラが危険にさらされる事例も散見されている。 こうした事例の分析を通じて見えてくるのは、都市インフラの相互依存性がもたらす連鎖的破壊の危険性と、インフラ事業者の直面する深刻なディレンマである。以下、公開情報を元に脅威の実態を分析するとともに、都市インフラが直面する問題の解説を通じて、この2点が今後の対策を考える上での重要な要素であることを明らかにしていく。