息を白くして、青年たちが引き揚げたばかりのカキを専用の機械で洗浄していた。朝のまだ暗い時間。養殖カキの収穫が最盛期を迎えた江田島市の浜辺で、青年たちは黙々と働く。時折、聞こえる言葉は中国語。そばの作業場でカキをむく日本人は70歳すぎの女性たちだった。 のどかな瀬戸内海の風景。しかし、江田島の北部に位置する切串の町は3月14日、ものものしいサイレンや上空を飛び交うヘリコプターの喧噪に包まれた。 「川口水産」で、中国籍の水産加工技能実習生、陳双喜被告=(31)、殺人罪などで起訴=が社長の川口信行さん=当時(55)=と、作業員の橋下政子さん=同(68)=を鍬やスコップで殴るなどして殺害、7人を負傷させる事件が起きた。 あれから9カ月、改めてカキ養殖現場の実態を取材した。 事件後に県水産課が行ったアンケートによると、県内の314業者のうち、外国人実習生を受け入れているのは83・1%(261業者)。