今年で14回目を迎える現代美術の祭典「ドクメンタ」。5年に一度、ドイツの地方都市カッセルでは初夏から秋の開催期間にかけて街全体が「100日間の美術館」と化すのだが、今回は「アテネから学ぶ」という主題のもと、カッセルに先立ちアテネで展示がオープンするという異例の2都市開催となった。 かつては敗戦国ドイツの文化・芸術復興の象徴として出発し、今日まで世界最大規模の国際美術展として躍進してきたドクメンタが、この度その舞台の半身としてアテネを選んだことは、それだけでも非常に示唆的だ。未だに金融危機の爪痕を濃厚に残し、バルカンに面したEUの門戸として大規模の難民が流入するギリシアには、今日のEU社会が抱える問題とその希望の針路が集約されていると言えるだろう。 芸術監督アダム・シムジック(Adam Szymczyk)によってこの度アテネに託された「芸術による再生」という期待は、あるいは戦後ドイツにおいて