会場の一番奥にある展示室の暗がりに入ったら、画面を見つめているうちに動けなくなり、無言になってしまう──。悲しい出来事の教訓を後世に伝えるため、思い切った展示が2019年秋に行われた。 今回のデジタル活用(デジカツ)はいつもと趣が異なる。ただ、自然災害が頻発している今のタイミングだからこそ、1人でも多くの人に知っておいてほしいので、このコラムで取り上げることにした。 とにかく、下の大型ディスプレーの画面を見てほしい。赤と青の線が真っすぐに動いたり、赤と青の点が止まったままだったりする。これは11年3月11日に起きた東日本大震災の地震発生直後からの30分間に、岩手県陸前高田市の中心街で行動し、そして亡くなった人たちの最後の行動記録である。居場所が詳細に判明した1326人のデータが詰め込まれている。 地元新聞である岩手日報社による聞き取り調査を基に、最後の30分を見える化した。地元紙だからこそ