前編はこちら 瀬戸内を訪ねた9月初頭はまだまだ猛暑で、連日、滝のような汗で全身の水分を搾り取られるようだったが、今時はもう大分涼しくなったことだろう。前回は個々の展示について触れることができなかったので、後編では島ごとに気になった作品を見て行きたい。 鈴木康広「ファスナーの船」 留め具のような形状の船が海をファスナーのように開いて行く「ファスナーの船」(鈴木康広)をデッキで眺めながら最初に渡ったのは女木島だった。港に着くと、地図を片手にまずは福武ハウスを探す。辿り着いたのは現在、休校中の女木小学校と旧保育所を使っての展示だ。玄関を入ったところに、休校直前の学校の様子が写真で飾られていて気になる。こうしてかつての島の様子や離島が抱える問題について知るのも、この芸術祭の一部と言える。展示ではビル・ヴィオラ(ジェームス・コーハン・ギャラリー)と杉本博司(ギャラリー小柳)に注目。前者はいつも通りの