近代西欧文明の所産:「選び取る」ことこれまでの議論を踏まえて注意すべきは、「近代の清算」を目指す動きが、民族や宗教といった前近代的な結びつきを単位に進められていることです。これは国境再編といった大きな変動だけにとどまらず、各地で生まれている宗教復興や保守化の潮流と軌を一にします。 中学や高校の世界史では、「ルネサンスの三大発明」として羅針盤、火薬、活版印刷があげられますが、これらはいずれも中国で既に発明されていたものが、ヨーロッパで実用化されたに過ぎません。むしろ、「近代西欧文明の三大発明」として、ここでは自由民主主義、市場経済、国民国家の三つをあげたいと思います。これらの制度や理念はいずれも、宗教改革とルネサンスに端を発する、近代西欧文明でのみ生まれたもので、それがその後の植民地化の過程で世界中に普及したものです。 この三つは、「自らで選び取る」ことを是認する思考が根底にある点で共通しま