2012年現在、音楽という産業、アートフォームほど状況が激変している分野も他にないのではないだろうか。 2012年4月、アメリカ・デトロイトのハウス・ミュージシャン、Moodymannの新作EP『Picture This』が無料ダウンロードで公開された。このデトロイトの深海の住人は、無料ダウンロードのようなリリースとは、もっとも遠い位置にいた。学生時代に彼のレコードを、渋谷・宇田川あたりのレコード店を渡り歩いて探した頃のことを思うと、隔世の感は否めない。 ここには、大きく分けて2つの変容がある。1つは、音楽がCDなどのパッケージからデジタル配信に移行し、宇田川のレコード街からレコード店というプレイヤーが姿を消したこと(あるいはそれらが実店舗からネットに移動したこと)。もう1つは、Moodymannの新作が「無料」で手に入るということである。 このように、インターネット/デジタル技術は