卸売業や不動産業など、これまで小売業と取引してきたBtoB(企業間取引)企業が、デジタルやデータを活用して小売店の支援に乗り出している。 キーワードは「情緒」だ。卸売業でも消費者のデータを取得し、消費者に向けて自ら広告などを配信する企業が出てきている。一例が食品卸大手の三菱食品だ。 「情緒的価値を創造できる卸売業に挑戦する」。三菱食品の小山裕士執行役員マーケティング開発本部長はこう意気込む。情緒的価値とは消費者が商品を購入することによる幸福感やワクワク感などといった精神的な価値を意味する。
「デジタル事業群戦略」を掲げる伊藤忠商事が提供するDX(デジタルトランスフォーメーション)支援サービスを象徴するのが、食品や飲料品メーカーの商品開発を支援する「FOODATA(フーデータ)」(2021年7月提供開始)と、個人の味の嗜好に基づいて商品をリコメンドする「食のパーソナライズド・レコメンデーション機能」(23年11月提供開始)である。複数のパートナー企業と連係しながら、感性データの中の味覚データを収集・分析して商品開発やリコメンドに生かすサービスだ。伊藤忠の狙いと具体的なサービスの内容を追った。 伊藤忠商事が「感性データ」、なかでも味覚に着目したのは2019年にまで遡る。情報・金融カンパニーの経営企画部内にあった新規事業開発室で、「リテールテックの1.5歩先プロジェクト」と題して次代のビジネスの種を検討していた際、候補の一つとして「味覚販促ソリューション」というものがあった。 20
2014年設立のスタートアップながら、新価値創造プロジェクトの実績は150社以上というNEW STANDARD(東京・世田谷)。それを可能にしたのがノウハウのメソッド化と、ミレニアル世代やZ世代に関するデータベースだった。 日経デザインの特集「次世代を担うクリエイティブチーム」第3回で紹介するチームは「NEW STANDARD」。2014年創業で、ブランドコンサルティングファーム、マーケティング&クリエイティブエージェンシー、シンクタンクという3つの事業を展開。創業10年目のスタートアップながら、アサヒビールやTOPPAN、アシックス・ジャパン、オルビス、ヤマハ発動機など、名だたる大手企業150社以上の新価値創造のプロジェクトの実績を持つ。 NEW STANDARDは元々、スマートフォンを軸にした、世界中から集めた新しい気づきや価値観と出合えるミレニアル世代及びZ世代向けライフスタイルメデ
「日本初のAI(人工知能)タレントCM」として話題になった伊藤園「お~いお茶 カテキン緑茶」のCM。前編では、AIタレントを生み出す過程やバズった契機などを紹介した。後編では、AIタレントを生み出す苦労や難しさ、CM制作にAIを使うメリットや可能性などを関係者に聞く。 2011年に、人間そっくりのバーチャルアイドル「江口愛実」が誕生。江崎グリコ「アイスの実」のCMでAKB48と共演して話題になった。当時は、そのCG技術の高さに驚きの声が上がるとともに、人間に近づけば近づくほど嫌悪感を抱く「不気味の谷現象」も取り沙汰された。 それから12年の間に“谷”を越えるほど進化したのが、AI技術だ。23年は、大日本除虫菊(金鳥、大阪市)が画像生成AIを活用して「キンチョール」のCMを制作。パルコ(東京・渋谷)はナレーションや音楽にもAIを使い、話題をさらった。そんな「AICM元年」に、「日本初のAIタ
近未来に生きる白髪交じりの女性が、軽やかな足取りでカメラに近づき、ペットボトルのお茶を差し出す。受け取ったのは、若さあふれる現在の彼女。お茶を飲んで笑顔になった彼女に、「未来の自分を、今から始める」というナレーションが重なる…。「日本初!AIタレントをCMに起用」として話題になった、伊藤園の「お~いお茶 カテキン緑茶」のCMだ。このCMはどのようにして生まれたのか。 「もともと当社には特定保健用食品の『カテキン緑茶』という商品がありました。それを『お~いお茶』ブランドの1つとしてポジショニングしたほうが分かりやすいだろうと、2022年9月26日に、『お~いお茶 カテキン緑茶』として新発売。23年9月4日に、茶葉の生命力を最大限に引き出すために、生成AIを活用した革新的なパッケージデザインでリニューアル発売しました」(伊藤園広告宣伝部の上條裕介氏) CMのメインターゲットに据えたのは、30~
明治大学 総合数理学部 宮下芳明研究室(以下、宮下芳明研究室)、株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)、H2L株式会社は、宮下芳明研究室とH2Lが研究開発した味覚を再現する技術と、ドコモが開発した「人間拡張基盤」を連携し、相手の感じ方に合わせた味覚を共有する技術を開発した。 今回開発された技術は、味覚に関するデータを把握する機器(センシングデバイス)と、味覚の感度に対する個人差を推定し共有する「人間拡張基盤」、味覚を再現する駆動機器(アクチュエーションデバイス)の3つで構成されている。 具体的には、伝えたい味をセンシングデバイスで分析・数値化したものと、共有する相手の味覚の感じ方を、約25項目のデータをもとに人間拡張基盤上で独自アルゴリズムを用いて推定し、それらをアクチュエーションデバイスを通じて、相手に伝えたい味を再現する。 アクチュエーションンデバイスは、味の基本となる五味(甘味、酸味、
知財ニュース 明治大、“熟成”や“新鮮”などの食味の時間軸を変える手法を発表─ひと晩寝かせたカレーや野菜の鮮度再現が即可能に 明治大学の宮下芳明教授は2023年11月24日、飲食物の味の時間軸を変える研究の検証結果をまとめた論文を公開した。また、11月29日から12月1日に行われた「第31回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ(WISS2023)」で、同論文を発表した。 論文は、カレースープやトマトなどを用いて、時間を置くことによる熟成(順行)と、時間経過で風味が落ちたものの鮮度再現(逆行)ができるかという検証をまとめたもの。測定は味覚センサーと実食で行い、調味には、宮下教授らが開発した高精度な味の調整ができる家電「TTTV3」を使用した。 検証では、作りたてのカレーや未熟なトマトを、数日寝かせた味わいに変えられることを確認。また熟成したものを数日前の味に戻すことも
― 作業員の負荷軽減、より付加価値の高い業務へのシフト、商品・サービスのさらなる品質向上を図る ― ― 2025年の工場での稼働を目指す ― サントリーホールディングス(株)は、開梱、計量、品質確認、タンクへの投入など、工場における原料の取り扱い業務の自動化を目指し、12月より技術検証を本格的に開始します。11月に構築したサントリー九州熊本工場内の技術検証設備にて、より生産現場に近い環境で検証を進めることで、技術開発を加速させます。 サントリーグループの生産現場ではさまざまな原料を取り扱いますが、梱包形態や大きさの違いから自動化が難しく、人手に頼らざるを得ない状況でした。また重い荷物の取り扱いも含むため、作業員の負担となっていました。 今回、共同で自動化技術の開発に臨んできた(株)安川電機とともに、AIを用いて単一の装置でさまざまな大きさや梱包形態の原料を取り扱う技術の検証を開始します。
困難だった“食べ歩き用プリン”開発 ChatGPTに解決を託した、とある乳製品メーカーの話 【プロンプト実例付き】(1/2 ページ) AIチャット「ChatGPT」と一緒に、“食べ歩き用プリン”を開発した──乳製品メーカーの山村乳業は、そんな発表をした。一体どのようにChatGPTを活用したのか、話を聞いた AIチャット「ChatGPT」と一緒に、“食べ歩き用プリン”を開発した──乳製品メーカーの山村乳業(三重県伊勢市)は10月30日、そんな発表をした。「山村ぷりんバー」と呼ばれるこの商品は、まるで棒付きアイスのような見た目だが、中身は正真正銘のプリン。「ただ棒を刺しただけでは?」と思うかもしれないが、その開発は困難であったという。
JR東日本が駅ナカなどに設置しているタッチパネル式の「イノベーション自販機」について、順次サービスを終了すると発表しました。自販機自体も撤去していくとのこと。なぜ終了に至ったのか、その理由を取材しました。 イノベーション自販機(以下、画像はacure pass公式サイトから) イノベーション自販機はタッチパネル式になっているだけでなく、アプリ「acure pass(アキュアパス)」と連携してさまざまな独自サービスを提供しているのも特徴。例えば、“サブスク”形式で毎日ドリンクが購入できたり、アプリ内で事前購入ができたりする他、ドリンクのプレゼントにも対応していました。 タッチパネルで購入できました しかし、2023年10月以降、順次自販機とacure passのサービスを終了していくと発表。すでにアプリでの商品購入や定期商品の新規購入、更新などは終了しています。2024年3月31日には、ドリ
常温の缶から“飲食店の生ビール”が提供できる業務用新ビールサーバー「nomiigo(ノミーゴ)」 10月5日(木)からテスト展開開始 ― 樽生ビールサーバー導入が困難であった飲食店で、一杯一杯“あけたて”のうまさを提供 ― サントリー(株)は、常温の缶から“飲食店の生ビール※1”が提供できる業務用新ビールサーバー「nomiigo(ノミーゴ)」のテスト展開を、10月5日(木)から開始します。 ※1 口あたりのよいクリーミーな泡と適正な温度を実現したビール 近年、ライフスタイルや価値観の変化とともに、お酒に対する向き合い方も多様化が進んでいます。実際に新型コロナウイルス感染症拡大前に比べると、カフェやファストフード店などさまざまな場所でお酒の飲用意向は高まっています※2。また、飲食店に行く機会をより貴重なものと捉え、飲むお酒にも高い品質を求める、といった動きがある※2こともわかりました。一方で
噴射液を収めている20の味タンクは各タンク1,000段階で制御でき、1那由他(10の60乗)通りの味の組み合わせが可能。またアルカリ性物質の添加による中和や、味覚修飾物質の活用や、他の味によるマスキング効果の利用で元の食品から特定の味を薄める「味の減算」もできる。0.02ml単位の細やかな味制御が可能で、ワインやカカオ、梅干しなど、産地や品種の微妙な味の違いまで再現できるという。 「TTTV3」にはさらに、ChatGPTなどに用いられている大規模言語モデル(LLM)と連携可能な対話システムを追加。マイクで料理名を指定する音声入力や、料理の画像をカメラにかざす画像入力を行うと、LLMが味を推定して調味を行う。例えば、市販のハンバーグをセットし、旅先で食べたハンバーグの画像をカメラに読み込ませると、LLMがハンバーグソースの味を推定して思い出の味を再現するという。 宮下研究室では「味覚はメディ
伊藤園は8月28日、9月に発売する「お~いお茶 カテキン緑茶」のパッケージデザインに画像生成AIを活用したと発表した。同様の取り組みは同社初。「中身だけでなく、外観も時代に合った魅力を伝えられる製品開発に努める」(同社)という。 画像生成AIサービスは、商品パッケージのリサーチやデザインを手掛けるプラグ(東京都千代田区)のものを活用。商品デザインに特化したAIサービスの先行試用版で生成した画像を参考に、デザイナーが一から作り直したという。 AI活用のデザインは500ミリリットル、1リットル、2リットルのペットボトルに加え、パウダータイプの「お~いお茶 カテキン緑茶 スティック」で採用。「茶葉の生命力を現したもので、従来のデザインとは一線を画す鮮やかな色彩と抜群の視認性を最大限に引き出したデザインをあしらった」(伊藤園)としている。 関連記事 AIが生成した絵画が、アニメ「BEASTARS」
「食×テクノロジー&サイエンス」をテーマにしたフードテックイベント「SKS JAPAN」を企画運営するシグマクシスは、2023年7月27日から3日間にわたって「SKS JAPAN 2023」を開催する。17年8月に開催した「Smart Kitchen Summit Japan」から第6回目を迎える同イベントだが、この間フードテックにまつわる動きはどのように変化しているのか。最新の5つのトレンドについて、シグマクシス常務執行役員の田中宏隆氏、プリンシパルの岡田亜希子氏、プリンシパルの住朋享氏に聞いた。 大企業を中心に日本でもフードテック実装が進む ――SKS JAPANは2017年の第1回からセッションの規模も参加者数も大幅に拡大しており、「食」の社会課題に対する関心度の高さが年々増しているように感じます。そんな中で、最近はどのような動きが活発化していますか。 田中宏隆氏(以下、田中) フー
サッポロホールディングス(HD)は社員一人ひとりが抱える業務課題の解決や新規事業に向けて自ら提案、実践する場「DXイノベーション★ラボ」(以下DXラボ)を2023年5月30日に始めた。 「ボトムアップでDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する場合、手を動かして実践できる場が必要だ」。サッポロHDの主要企業であるサッポロビールで全社DX推進の旗振り役を務める牧野成寿取締役執行役員はこう語る。DXラボはサッポログループの「全社員DX人財化」を推進する土台となる人材育成プログラムの一環で、サッポロビールも全社で取り組んでいる。 AWSジャパンやマイクロソフトなど16社がパートナーに DXラボは、サッポログループの企業に勤める社員全員が参加できるオープンイノベーションの場(プラットフォーム)だ。身の回りの業務改善から新規事業まで、デジタル技術を使って実現したいアイデアを提案できる。グルー
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