東京にある「坊主BAR」。カウンターの向こう側で接客する僧侶たちは、この世の快楽に対する禁欲を説くどころか、まるで反対のことを奨励する。釈迦にたどり着くにはいろいろな道がある――店主を務める僧侶の藤岡善念氏は客のためにジントニックを作りながらそう語った。「気づきは、どんな会話においても得られるものです。私たちはそのための機会を提供しています」。 教義のこうした捉え方は、世間との接点を保とうとする日本の仏教徒がときに取り入れるものだ。日本全国には7万7000の寺がある。その一部はカフェを経営したりファッションショーを催したり、ペットの葬儀を執り行ったりしている。それでもなお、毎年何百という寺が閉鎖しているのが現状だ。日本の仏教の危機に迫った『寺院消滅』を著した日経ビジネス記者の鵜飼秀徳氏は、2040年までに日本の寺院の4割が消滅するかもしれないと悲嘆する。 京都の鹿苑寺(通称、金閣寺)の舎利