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アキバトロンに関するmosshmのブックマーク (25)

  • 萌魔導士アキバトロン(25)・一章終 - 萌え理論ブログ

    「もう朝か……?」 身体を揺すられて志朗が起きると、そこは夢の中だった。無数の白人形に囲まれている。 「あんたはそこで見とき」 ロンがチャイナドレスを着て、あの廊下に立っている。 「まかしときいな」 そう言って素手のまま白人形に単身突っ込み、鮮やかな蹴りで片端からなぎ倒す。功夫だ。燕青拳か。柔軟な肢体を優雅な歩法で運用する。スマートで長い足が蹴るたび高く上がった。 「身体が軽いわあ。マッサージの甲斐あったな」 息も切らさず楽しそうに語る。白人形が次々壁や床に吸収されて消えていき、最後の一体を倒すと、あの黒人形が来た。 「あんなもん小ボスや小ボス」 突進した彼女はもの凄いで蹴りを繰り出す。身体が何回も舞って一方的に叩き込む。そして最後に廻し蹴りを叩き込むと、あの巨体が宙を舞った。床に叩きつけられると染みとなって吸い込まれていく。 「やった!!」 しかし、いきなり視界の外から平手打ちをらう。

    萌魔導士アキバトロン(25)・一章終 - 萌え理論ブログ
  • 萌魔導士アキバトロン(24) - 萌え理論ブログ

    「ちょっと待って」 「なんや。怖気づいたんかいな」 ベッドに備え付けられた頼りない灯りに壁まで照らす力はなく、室内のほとんどは暗闇の支配に屈服していた。会話が外に聞こえはしないだろうが、後ろめたいかのように声を一段低くして、志朗はささやく。 「こういうのはちょっと」 「勘違いせえへんといてな。Hするわけやないで」 話がうますぎるので、何かの罠ではないかと疑う。そもそも夢の中での戦闘からして、ただの厄介事とともいえる。ではもし、何も落とし穴はなかったとしたら、喜んで裸を見せてもらうのか。自問する。何か萌に申し訳ないような。でもなぜ彼女に遠慮しなくてはいけないのか。 「ああ、もう、肝っ玉の小さい奴やな」 「……ごめん」 「じゃ、体操着の上からでもええわ」 彼女はベッドの上で横になり、そのしなやかな肢体をしばらくの間、身じろぎもせずにじっと彼は見つめていた。 「ちょ、退屈やな」 「そう?」 「マ

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  • 萌魔導士アキバトロン(23) - 萌え理論ブログ

    「夢の中での強さはイメージの強さで決まるんや」 もしかして絵理やLiloが無意味に襲ってきたのは、強いという先入観を植え付けるためかもしれないと思った。だがそれだと萌の戦闘能力が何に由来するか分からない。とにかく、何かが仕組まれてる気がする。 「ロンも夢の戦闘に参加するのか」 「察しがええな」 志朗は少し身構える。 「強くなるには幾つか方法があって、例えばここであんたをボコボコにする」 「……」 見た目に強そうに見えないが、今までの経緯から油断はできない。 「が、嫌われてしまうと夢から追い出されてしまう」 「なるほど」 「トラウマになる位まで嫌われれる手もあるけどな」 「勘弁」 人をなんだと思っているんだ。 「もう一つは、イメージの土台を強化する」 「どういうふうに?」 「ただ記憶が鮮明になるだけで強い」 「……だから俺がサーバ役なのか?」 「そうや」 彼には直観像資質があった。一度見たも

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  • 萌魔導士アキバトロン(22) - 萌え理論ブログ

    「志朗。今なら二人っきりやから、何でもゆうてみい」 「べつに……」 夢のことをロンに話すべきか迷う。解決につながる気があまりしない。それに見た感じでは口も軽そうだ。 「そう、レモンのことやけどな」 「!」 「単にべ物のイメージなんちゃう」 「そ、そうかな。酸っぱいからあんまりべないけど」 またしてもお見通しか。どうなってるんだろう。明かりに薄く照らされた彼女は、昼間の陽気な印象とはまた違っていた。今は帽子をかぶっておらず、髪は団子のようにまとめて、狭いベッドに腰掛けながらも、ブルマから伸びた健康的に日焼けした足をときどき組み替える。その動作はとてもしなやかで、絵理の優雅な立ち居振る舞いや、Liloの精密な一挙手一投足とはまた違った個性を感じた。 「苦戦してるんやろ」 とつぜん彼女は切り出す。話が全く見えてこない。 「どういうこと?」 「黒い木偶に」 こいつ。夢での戦闘を知っている? も

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  • 萌魔導士アキバトロン(21) - 萌え理論ブログ

    非常灯の微かな光を頼りに暗い廊下を進む。保健室を飛び出して来た志朗は、朝まで眠れる場所を探して歩く。既に深夜の零時を回っていた。彼は早朝図書室でを読む習慣があるので、家へ帰るのはこうなっては面倒臭い。授業の教科書が机にないが、そもそも全教科の教科書は暗記してあるから、全く問題なし。それに、また眠って戦闘になったときのために、ある程度の対策を練ってから眠りたかった。いつも後手後手だ。 学園内の案内板で洗面施設を見つけた。コインランドリーで制服を洗濯している内にシャワーを浴びる。喉が渇いたので自動販売機でジュースを飲む。ろくなのがない。仕方なくバナナオレを飲むと、意外に美味かった。糖分を補給して脳が冴える。しかし、情報が少なすぎて、夢戦闘の有効な対策は立てられない。モップ掛けは無理そうだが、銃を借りて撃てないか。だが下手な鉄砲で弾の無駄使いになるなら、逃げ回った方がマシかもしれない。それにし

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  • 萌魔導士アキバトロン(20) - 萌え理論ブログ

    天井の蛍光灯が冷たく白い光を放つ。ベッドの周りはカーテンで遮られている。薬が匂う。もしかしてどこぞの病院に入れられてしまったのではないかと不安になった。カーテンの隙間からそっと外を伺うと、夜の校庭が見える。学園の保健室だろう。そっとつぶやく。 「人の夢で好き放題暴れやがって」 また長い間眠ってしまったのか。午後の授業はないからさほど問題ないが、記憶が飛んでいるのはやはり心配だ。差し迫った危険はないと判断した志朗は、少し心許ないままカーテンの外に出てみる。白衣を着た女性がいた。 「起きたのね、志朗君」 「……どうも」 彼女はスタイルの良い身体をしていた。タイトスカートからスラリと伸びた足を組んで座っている。眼の毒だ。 「この学園の保健医、藤見です」 「こんな時間まで、その」 「宿直よ。この学園には夜間部もあるし」 部屋の時計はもうすぐ深夜零時だ。夜遅くまでここにいて問題ないのかと彼は聞きたか

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  • 萌魔導士アキバトロン(19) - 萌え理論ブログ

    ヘッドギアの戦闘状態を表すLEDランプを明滅させながら、Liloはサブマシンガンを黒人形にありったけ撃ち込むが、あまり効いていない。さっき跳ね飛ばされたモップが折れてしまった萌は、取り囲まれた白人形たちを前にしてハンガーを取り出すと、まるでヌンチャクのように振り回して蹴散らし、遠くの敵にはブーメランのように投げてなぎ倒す。その間、ただ逃げ回って彼女たちの戦いを眺めるしかない志朗は、苛立ったように聞く。 「俺には何ができる」 「何もしなくて結構です、志朗」 「なぜ!」 ヘッドギアから流れる音声は、冷気のように頬を撫でる。 「あなたはサーバ役として既に機能しています」 LEDが規則正しく点滅する。キュンキュンという微かな音が聞こえる。 「どういうことだ?」 詳細は後で、とだけ告げたLiloはまた銃撃をはじめる。俺が鯖になっている? 志朗は納得がいかない様子だった。二人が黒人形に苦戦しているのを

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  • 萌魔導士アキバトロン(18) - 萌え理論ブログ

    すると、白人形がびくびく痙攣した。射撃音がする。誰かがこいつの身体を後ろから撃つ。サブマシンガンを構えたLiloだった。俺に当たったらどうすると志朗はほんの一瞬思ったが、機械だから射撃も正確だと即座に考え直し、その場から動かない。撃たれた続けた白人形たちは床の染みになってすぐ消えた。もし助けてくれなかったらどうなっていたのだろう。 「実銃……なのか?」 「夢の中では意味をなさない質問です、志朗」 「死なないよな? 撃たれたり、あいつらにやられても」 「直接は死にませんが、精神的機能障害が残ることはあります」 「……」 「それが原因で自殺する可能性もあり、結果的に死ぬ確率はゼロではない」 「なんてこった」 夢なら絶対安全だろうと思い込んでいた。死ぬこともあるんだ。甘かった。もちろん自殺云々も単なる思い込みにすぎないかもしれない。そもそも彼女たちの言動も脳内の出来事かもしれない。でも今の状態で

    萌魔導士アキバトロン(18) - 萌え理論ブログ
  • 萌魔導士アキバトロン(17) - 萌え理論ブログ

    クネクネ動く得体の知れないものがのろのろと近づく。萌は一歩も退かないが、志朗は少し後ずさった。振り返ると、背後にもいる! 教室から次から次へと出てくるそれは、みな白や灰色をしたのっぺらぼうだ。囲まれてしまう。萌はどこから取り出したのか、呑気にモップを構えている。 「この期に及んで掃除でもする気か!?」 「そうだよ。とりゃー」 素っ頓狂な声と共にモップ掛けを開始すると、萌のメイド服を赤いオーラが包む。炎のモップ掛けで、人型の物体を二、三体まとめて吹っ飛ばす。軽自動車に跳ねられた位の勢いで、白人形は壁に叩きつけられる。一体は壁に吸い込まれるように消えていく。間抜けな外見だが、なかなか威力がある技だ。しかし、白人形たちの数も増えてくる。 「萌、こっちも頼む!」 モップを掛けながら萌が廊下の端で折り返す。そのとき、廊下に染みが出来たかと思うと、一回り大きな黒い人形が萌と志朗の間に立ち塞がった。今度

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  • 萌魔導士アキバトロン(16) - 萌え理論ブログ

    志朗は目を見張った。見慣れているはずの萌がメイド服を着ただけで、魔法を掛けたように神秘的な雰囲気に見えてしまう。ペチコートで膨らんだスカートの裾が歩くたびにひらひらと舞う。萌の彼氏になる奴は、この見かけだけに騙されてしまうかもしれない。 「……」 なぜメイド服を着ているのか。それは学園内にあるメイドカフェで昼だけバイトしているからだ。メイドカフェはやりすぎだと思うが、学園公認で短時間で働けて通勤時間がゼロなのは、ある意味合理的ではある。常に監視下にあるので外でバイトするより安心だという見方もできなくはない。そういえば何か聞き逃したような。 「え? なに?」 「気をつけて。もう夢の中に入ってるから」 「!!」 何かがおかしい。いつの間にかシーンとしている。さっきまで昼飯をっていたのに何でもう寝てるんだ? 屋上に行ったり仮眠室に潜り込んだりする間の記憶が飛んでいる? しかし、何が起こっても夢

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  • 萌魔導士アキバトロン(15) - 萌え理論ブログ

    「ウチ、この学園で寝泊りしてるねん」 志朗はやきそばをべながらロンからそんな話を聞かされた。なんでも、この広い学園には仮眠室やシャワー室もあるし、飯は自前でまかなえるから、寮代わりに暮らしているというのだ。柑野は酸っぱい紅ショウガをかじって質問した。 「服はどうしてんだ?」 「ロッカーに着替えがあるからな。入学するとき制服と体操着を何枚も買っといたんや」 なぜそんなことを聞く。しかし、夜の学園に一人でブルマ姿とかで寝ているのだろうか。橘はグレープ味の炭酸飲料を飲んでから、質問した。 「志朗がさ、一人暮らしをしているんだよ」 「へぇ〜。うらやましいこっちゃな」 なぜそんなことを言う。 「夜に女の子一人っきりじゃ危なくない?」 「いちおう警備されてるから安全やと思うけど……」 「まあ男の子と一つ屋根の下の方が危険かもね」 「アバンチュールちゅうやつやな。ご厄介になるかもしれへん」 橘とロンは

    萌魔導士アキバトロン(15) - 萌え理論ブログ
  • 萌魔導士アキバトロン(14) - 萌え理論ブログ

    授業が終わった。志朗は、昼飯を喰いに学生堂に向かう。学園は広い。廊下の天井にはレールが通っていて、教材や書類などが小型モノレールで運搬されていく。例えば図書室から教室に送ることもできるのだ。幹線廊下には、交通事故にならない程度のノロノロとした速度で電気無人車が通る。災害が出た場合など緊急時にのみ、教員が負傷者を載せて走ることができるという。 そんなことをあれこれ考えているうちに、志朗は学につく。昨日萌から教えてもらった、名物の炭酸やきそばパンをべたい。しかし、学のおばさんは、あっさり売り切れを告げる。どうしよう。そんなとき堂の隅で鉄板を広げている女子生徒が目に止まった。建物の中なのに帽子を被っている。鉄板は焼肉を焼けるような結構立派なものだ。慣れた手つきで焼きそばを焼く。じっと見ていると帽子の少女から声が掛かった。 「あんちゃん、喰うか? タダやないで」 「商売してんのか?」 「

    萌魔導士アキバトロン(14) - 萌え理論ブログ
  • 萌魔導士アキバトロン(13) - 萌え理論ブログ

    「メガネビーム」 ヘッドギアの少女は大きな額縁眼鏡を掛けて、冷たい無機質な声で宣言する。眼鏡のレンズから閃光が迸り、光線のサーチ先が爆発する。絵理は間一髪で飛翔してかわす。 「無茶苦茶だ」 図書室の窓から校門付近を覗いていた志朗が人事のようにつぶやく。彼女たちは色々な意味で人間離れしている。どうなってるんだ。 「やるな! わたくしは絵理」 「私はリロ」 機械みたいな声だと思っていたが、当に機械音声のようだ。よく見ると口が動いていない。さっきはミサイルと絵理の抱擁でそれどころではなかった。まさかロボットとかじゃないだろうな。そういえばさっきから一緒にいる萌が大人しい。ロボットとかには興味ないのか。 「萌?」 振り向くと、蒼髪碧眼の少女がいた。志朗はハッとする。 「き、君は夢の中にいたはず…」 少女は髪をなびかせて穏やかに頷く。 「ここは夢の中なのです」 とつぜん、五冊のが同時に開き、ペー

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  • 萌魔導士アキバトロン(12) - 萌え理論ブログ

    「危ない!!」 ミサイルを避けるため、飛び出してきた絵理にかばわれ、志朗は押し倒される格好になった。そんな場合じゃないのにドキドキする。小型ミサイルは校門に当たったが、爆発はしない。萌えは事態がよく分からずにモグモグしている。 「殺す気か!?」 「信管も炸薬も入っていません」 門を挟んだ学園側から、バックパックを背負い、ヘッドギアを被った少女が現れた。無表情で喋る。 「なぜ襲う」 「志朗を試すために」 また試験か。俺を知っているのか。 「ボクは関係ない話かな? 先行くね」 やっとパンをべ終わった萌がこそこそ駆け抜けていく。薄情な奴だ。いても足手まといだが。身を起こして絵理から離れた。とにかく逃げよう。ヘッドギアの少女は、バックパックからサブマシンガンを取り出して片手で撃つ。タタタタタ。ミサイル同様チャチな音だ。地面を掘り返していた弾道が迫ってきて、次の瞬間痛みが下半身の数箇所に走っていた

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  • 萌魔導士アキバトロン(11) - 萌え理論ブログ

    萌と二人で朝飯をべながら空模様を眺めると、梅雨を予感させる曇天が窓一面に広がっている。 「降るかな」 「ふるふるもぐもぐ」 答えているのか味わっているのかバカにされているのか曖昧だが、傘を持っていった方が良さそうか。折りたたみを一カバンに入れてを履く。萌はといえば、オレンジジャムをたっぷり塗ったトーストにまだかじりついている。トロイ。玄関を開けると絵理がいた。 「な、なにか用?」 「お迎えに参りました」 彼女は木刀を持参している。また襲われたりするのだろうか。 「いえちょっと……お守りするために」 涼しい顔でさらりと言う。誰かに狙われているとでもいうのか。 「もし志朗殿に万が一のことがあっては、わたくし……」 昨日の今日でいきなりそんなこと言われてもなあ。しかし、彼女に逆らうメリットがない。 「同じ萌理学園に通うことになりますから。わたくしも後期一年生です」 そして新しい自転車は寝か

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  • 萌魔導士アキバトロン(10) - 萌え理論ブログ

    「499」 志朗がつぶやくように数えている内に、ドアが開くときに特有の蝶番がこすれる音を聞いた。それは部屋の主の彼にしか分からない。例えば点けっ放しのTVはたとえ消音していても、ブラウン管が発する独特の音によって分かる。NTSCの同期信号が彼の可聴域に入っているのだ。ベッドに足音が近づく。数えるのを中断し、目を閉じたまま人の気配に対して神経を研ぎ澄ます。濡れているのか、水がしたたっている音がする。水滴が落下するわずかな音も聞き逃さない。それとも幻聴だろうか。 ベッドのかたわらに立つ。瞼を閉じていても月光をさえぎっている人影を感じる。泥棒だろうか。しかも、変な匂いと空気音もする。眠くて身体が思うように動かない。起きた方がいいか起きない方がいいか。どちらが安全だろう。うまく思考がまとまらないまま、嫌な気配だけがアンプを通したように増幅して肌を圧迫する。偶然、壁越しに自分の噂話を聞いてしまうとき

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  • 萌魔導士アキバトロン(9) - 萌え理論ブログ

    苺の余韻を味わいながら、自分の部屋でベッドに横になって、今日の一日を志朗は振り返っていた。夢のこと、学園のこと、絵理のこと、萌のこと。 危険なのは絵理だ。力もあるし意図も見えない。しかし、どうしようもない相手なら、いつも通りにしていればいい。対応はかえって楽だ。それに危険ではあるが興味もある。普通なら相手をしてもらえないだろうから。 面倒なのは学園だ。授業やテストは暗記でしのげるから心配ないが、後期一年にどんな面子がいるか。みんなが絵理のような奴だったら身がもたない。橘と柑野にでも聞こう。明日からは昼飯がいるが、まあ学でいいだろう。 気になるのは、今朝から見ている夢だ。知り合いに蒼髪碧眼の少女はいない。何かの予知夢だったりするのだろうか。または深層心理だったりするのか。レモンの意味も分からない。あれだけの情報では雲を掴むような話だ。気にするのは徒労だろう。 別の意味で気になるのが萌だ。幼

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  • 萌魔導士アキバトロン(8) - 萌え理論ブログ

    志朗の部屋のベランダは、隣家に向き合っていた。暗闇の中で手すりをまたぎ、隣のベランダに慣れた手つきで乗り移る。カーテンが掛かったガラス戸を叩くと、しばらくして鍵が開く。萌は驚いた顔で出迎えてくれた。要するに志朗と萌の部屋は二階が隣り合って行き来できるのだ。ぬいぐるみがある普通の少女の部屋だ。 「心配してたんだよ!」 彼女は彼をぽかぽかと叩く。頭を撫でてやる。髪からリンスの良い香りが漂う。彼女のふくれっ面はやがてため息で頬がしぼむ。彼女の話ではあのとき志朗が気絶した後、黒い長いベンツに――おそらくリムジンのことか――詰め込まれて風のように去っていったという。 「明日からまた一緒に登校するよ?」 はあ? 志朗は呆れた。今朝は萌と別々に登校して来た。方向音痴な彼女は初登校のために、朝が弱いにも関わらず早起きして、一人きりで登校したのだった。彼女にはひどいと責められたのだが、もう男女を意識するよう

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  • 萌魔導士アキバトロン(7) - 萌え理論ブログ

    「俺は何が何だか……とりあえず、手当てをありがとう」 「申し訳ありません。」 夕日が差し込む和室の寝室。制服を着たままの二人は、礼と詫びですれ違う。態度が軟化してるだけでも良好だと思った。彼女がその気ならきっと簀巻きで神田川にドボン。納得しないが感情のまま行動もしない。でもなぜあんなことを? 「あれは貴殿を試すため」 「何のために?」 「それはまだ……」 理不尽。志朗は思う。金持ちの御嬢様なんだろうが、道で刀を振り回していいのか? 「あの場所は私有地なので」 そうだったのか。萌を置いていけず自転車に乗れないので、つい急いで近道してしまった。 「多少のことは……」 怖い。もみ消せるのか。やはりご機嫌を損ねたら、コンクリ履かされて東京湾にドボン。 「今夜はお泊まりを……」 「家に帰りたい」 「左様ですか。残念です」 なぜ照れる。 「試験の結果は?」 「まずまずといったところ」 絵理は再び凛とし

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  • 萌魔導士アキバトロン(6) - 萌え理論ブログ

    蒼髪碧眼の少女の視線に衝突した。志朗を見つめる意味深長なまなざし。現実世界で出遭ったことは無いはずだが、知っているのか。彼女は横目で睨む。そこには巫女装束を着た絵理がいる。手にしているのはあの日刀。きらめく刀身は周囲のビル街を映す。彼は後ずさって二人から距離を取った。二人とも味方なのか敵なのか分からない。 絵理は少女に斬りかかる。彼は止めなくてはいけないと思ったが、足は固まって動かず、声も出せない。ただ無力に眺めているしかなかった。絵理の剣戟は残像が見えないほど早い。それを紙一重の間合いで全てかわしている。そのたびに少女のロングストレートの髪が流れるように揺れる。素手で戦うなんて無茶だ。この六冊目を……。 これは現実ではないのか。色彩は豊かだが輪郭はぼんやりしたレモンの夢に比べて、より鮮明にはなっている。しかしまだ現実感に乏しい。思うように身体が動かせないし映像の前後がおかしい。だんだん

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