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本を買うの検索結果1 - 40 件 / 56件

本を買うに関するエントリは56件あります。 社会book などが関連タグです。 人気エントリには 『巨乳の炎上に見る進化と文化のミスマッチ - 本しゃぶり』などがあります。
  • 巨乳の炎上に見る進化と文化のミスマッチ - 本しゃぶり

    『ひとりの成人は乳を見た』 『もうひとりの成人は、言動を通して心をみていた』 あなたはどちらだろうか? 燃える巨乳 また巨乳キャラが話題になっている。 巨乳キャラでも堂々としていればいいとは何だったのか。まあ、キズナアイの件*1を考えると、胸のサイズや表情というのは重要ではないのだろう。 この手の展示物が話題になるたびに、「逆の立場になって考えろ」という意見が出る。男性だって性的に消費されるような展示物が公共の場にあったら不快になるだろう、と。 しかし、女性向けに作成された展示物が「男性を性的に消費している」と問題になったことはほとんど無い。おそらく探せば一つくらいはあるのだろうが、俺はパッと思いつかない。定量的に語るのは難しいが、男性向けに比べたら炎上の頻度は少ないだろう。 Togetterで「ジェンダー」タグのまとめについたタグからも予想できる この実感が正しいのならば、なぜ炎上するの

      巨乳の炎上に見る進化と文化のミスマッチ - 本しゃぶり
    • 中国だけで2100万部、話題性と本物のおもしろさを兼ね揃えたバケモノ級の中国SF──『三体』 - 基本読書

      三体 作者:劉 慈欣発売日: 2019/07/04メディア: ハードカバー『三体』とは! 中国の作家劉慈欣によって書かれたSF三部作の第一部目にして、中国国内だけで三部作累計2100万部を刊行し、さらに日本でも人気のケン・リュウによる翻訳によってアメリカの歴史あるヒューゴー賞を受賞した傑作である。ヒューゴー賞受賞の何が凄いかと言うと、翻訳書としてははじめてのの受賞になるのだ。 それぐらい作品の内容が圧倒していたともいえる。で、あまりSFとは縁のなさそうなオバマやザッカーバーグも絶賛していたりとか、アニメ化が決定したりとか話題は尽きないんだけれども、とにもかくにもこれだけは覚えて帰ってもらいたいのは、この『三体』は、話題先行の内容はまあおもしろいね、いうほどじゃないけど的な軟弱な態度で読み終わる作品ではなく、その肥大化しきっているともいえる話題性に劣らない、圧倒的なおもしろさのある、純粋にお

        中国だけで2100万部、話題性と本物のおもしろさを兼ね揃えたバケモノ級の中国SF──『三体』 - 基本読書
      • 「愛のあるセックス」はなぜ必要か(読書メモ:『性と愛の脳科学』) - 道徳的動物日記

        性と愛の脳科学 新たな愛の物語 作者:ラリー・ヤング,ブライアン・アレグザンダー 発売日: 2015/12/09 メディア: 単行本 この本の概要については先日の記事でさくっと触れているので、いきなり本題から*1。 この本でまず面白かったのが、第4章から第6章にかけて、女性と男性が異性に対してそれぞれに抱く愛情の質の違いを分析するところだ。 第4章の「母性を生む回路」では、自分が産んだ子供を世話したいと母親が思う感情、つまり「母性愛」の存在が脳科学の観点から説明される。端的にいえば、母性愛とはプロラクチンとオキシトシンというホルモンによって引き起こされる。オキシトシンが母親に与える影響の具体例は、以下のようなものである。 人の母親が赤ん坊を胸に抱いてやる時、母親は赤ん坊の顔と目を見つめ、赤ん坊もしばしば、母親の顔を見つめ返す。母親は赤ん坊の泣き声や、赤ん坊の声に耳を傾け、自分からも声をかけ

          「愛のあるセックス」はなぜ必要か(読書メモ:『性と愛の脳科学』) - 道徳的動物日記
        • この本がスゴい!2019

          人生は短く、読む本は多い。 毎年この時期、自分のリストを振り返るのだが、読みたい本が尽きることはない。読むほどに、知るほどに、知識と理解と表現の不足を痛感する。 それでも読むし、ここに書く。読むことで豊かになり、書くことで確かになるというのは本当で、読んでいるときに何を知りどう考えていたかは、書くことでハッキリする。 つまり、自分で分かるために書いているのだ。フランシス・ベーコンは、話すことで機敏になるとも言ったが、わたしの場合、話すことで世界が変わった。[スゴ本オフ]や読書会、[冬木さんとのSF対談]や、読書猿さんとの知をめぐる対談[1][2][3]で、世界の見え方が変わった。 読書会や対談は今後もしていくが、そこで紹介された本や、2019年に出会った本の中から、わたしにとってのベストを選んだ。これが、あなたにとってのスゴ本となれば嬉しい。そして、このリストを目にしたあなたが、「それがス

            この本がスゴい!2019
          • 見た目が不自由な人の保護は必要か - 本しゃぶり

            世の中は見た目が良い人の方が有利である。 ならば見た目が悪い人は保護するべきではないか。 この主張を掘り下げてみた。 ブサイクを法律で守る 目次に書かれたこの章題を見た時、「さすがに無茶だろ」と思った。しかし本を読み進め、この章にたどり着いた時には「たしかに一理あるな」と変わっていた。読んでいた本は『美貌格差 ―生まれつき不平等の経済学』である。 美貌格差―生まれつき不平等の経済学 作者:ダニエル・S・ハマーメッシュ東洋経済新報社Amazon 本書は、人の容姿による経済的な影響を示した本である。多くの人が直感的に「美人は得で、ブサイクは損」であると思っている。だがそれは、どの程度の差なのか、男女で容姿が収入に与える影響は異なるのか、といったことは、人によって意見が異なるだろう。本書はそれを定量的に調査した研究を示すのが良い。 そうやって容姿の経済的な影響を調べていくと、やはり容姿が優れてい

              見た目が不自由な人の保護は必要か - 本しゃぶり
            • 社会に分断をもたらした「自分自身の努力と勤勉さ」で成功したという考え──『実力も運のうち 能力主義は正義か?』 - 基本読書

              実力も運のうち 能力主義は正義か? 作者:マイケル・サンデル発売日: 2021/04/14メディア: 単行本この『実力も運のうち 能力主義は正義か?』は『これからの「正義」の話をしよう』が大ヒットした、マイケル・サンデル教授の最新作である。『それをお金で買いますか 市場主義の限界』など、毎回その時代に問われるべきテーマを取り上げてきたサンデルだが、そんな彼が今回注目したのが「能力主義」だ。これは、現代の「分断」の原因を的確に写し取っているように感じられて、非常におもしろかった。 分断というキーワード アメリカ大統領選におけるトランプとバイデンの接戦、イギリスのEU離脱、ポピュリストたちのエリートへの怒りなど今世界中で「分断」がキーワードになっているが、その要因の一つがこの「能力主義」にあるとサンデルは語る。たくさん勉強や努力をして良い大学に入り、良い仕事と賃金を得る。それに成功した人はその

                社会に分断をもたらした「自分自身の努力と勤勉さ」で成功したという考え──『実力も運のうち 能力主義は正義か?』 - 基本読書
              • 『宗教の起源──私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』 ダンバー数、エンドルフィン、共同体の結束 - HONZ

                ロビン・ダンバーは、彼が提唱した「ダンバー数」とともに、その名が広く知られている研究者である。ダンバー数とは、ヒトが安定的に社会的関係を築ける人数のことであり、具体的には約150と見積もられている。ダンバーは、霊長類各種の脳の大きさ(とくに新皮質の大きさ)と集団サイズの間に相関関係があることを見てとり、ヒトの平均的な集団サイズとしてその数をはじき出したのであった。 さて、そんなダンバーが本書で新たな課題として取り組むのが、「宗教の起源」である。人類史において、宗教はどのようにして生まれ、どのように拡大を遂げていったのか。宗教に関する広範な知識に加えて、専門の人類学や心理学の知見も駆使しながら、ダンバーはその大きな謎に迫っていく。 ダンバーも言及しているように、現生人類の歴史のなかで、宗教は個人や社会に対していくつかの利益をもたらしてきたと考えられる。その代表的なものを5つ挙げるとすれば、(

                  『宗教の起源──私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』 ダンバー数、エンドルフィン、共同体の結束 - HONZ
                • 差別をなくすために差別を温存している? 『「社会正義」はいつも正しい』の読みどころを訳者・山形浩生が解説!|Hayakawa Books & Magazines(β)

                  差別をなくすために差別を温存している? 『「社会正義」はいつも正しい』の読みどころを訳者・山形浩生が解説! 「白人は、白人というだけで人種差別的である」 「病気や障害を治療・予防しようとする試みは、当事者への憎悪に基づいている」 「映画の中で黒人女性キャラクターを力強いタフな人物として描くのは黒人差別(だが、弱く従属的な存在として描くと女性差別)」 ――ほんとうに? 現代世界を席捲する「社会正義」の根拠を問う全米ベストセラー『「社会正義」はいつも正しい 人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて』(ヘレン・プラックローズ、ジェームズ・リンゼイ:著、山形浩生、森本正史:訳、早川書房)。11月16日の刊行に先立ち、山形浩生氏による「訳者解説」を全文公開します。 『「社会正義」はいつも正しい』早川書房訳者解説1 はじめに本書はHelen Pluckrose and James Li

                    差別をなくすために差別を温存している? 『「社会正義」はいつも正しい』の読みどころを訳者・山形浩生が解説!|Hayakawa Books & Magazines(β)
                  • 椎名林檎を論じて見えてきた現代の大衆と文化 - 集英社新書プラス

                    2017年に創設された「すばるクリティーク賞」。評論の新人賞が減少傾向にあるなか、文芸誌「すばる」の編集部が主催し2021年で4回目を迎える。1月6日発売の「すばる2月号」で発表された2021年の受賞作は、西村紗知さんによる「椎名林檎における母性の問題」だ。 この論考では、J-POPのフロントランナーの一人、椎名林檎の作品における表現の特異性を論じながらも、彼女の楽曲や発言から、すべてのものを無批判に受け入れる「母性原理」が全面化していることを指摘。そしてそれは、日本の大衆の主体性のなさ、成熟できなさを映し出してしまっていると鋭く論じ、発表直後から大きく話題を呼んだ。西村さんはなぜ、椎名林檎を論じたのか。音楽を中心に、表象文化全般について執筆活動を行う批評家、伏見瞬によるインタビューを通して、その意図に迫る。 椎名林檎という音楽家は、西村さんにとってどんな人ですか。 間違いなく、永遠の憧れ

                      椎名林檎を論じて見えてきた現代の大衆と文化 - 集英社新書プラス
                    • サンデル教授「バイデンが大統領選で勝っても、根本的な問題は消えない」(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース

                      マイケル・サンデル Michael Sandel ハーバード大学教授。専門は政治哲学。コミュニタリアニズムの代表的論者として知られるPhoto: Colin McPherson / Corbis / Getty Images 米大統領選目前、分断された今の社会に必要なのは、政治を変える以前に、「エリートたちが謙虚さを養う」こと──ハーバード大学の政治学者マイケル・サンデルが語った。 ボストンはザーザー降りの雨だった。哲学者マイケル・サンデルとのインタビューは、新型コロナ感染予防のため密閉空間を避けて彼の自宅の庭でする予定だった。しかし、前もって言われていたように、雨だったら場所を変更するしかない。 サンデルは午前中、オンライン授業で忙しい。だから、屋外だけれども雨に濡れずにすむ、代わりの場所を探すのは、ジャーナリストの私の役目となった。私が思いついたのは、「ハーバード大学カーペンター視覚芸

                        サンデル教授「バイデンが大統領選で勝っても、根本的な問題は消えない」(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース
                      • 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』と『花束みたいな恋をした』:ロマン優光連載288

                        288回 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』と『花束みたいな恋をした』 三宅香帆氏によるベストセラー『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)は非常な労作であり、様々な資料にあたりながら、明治以降の社会における読書というものの位置付けの変化を追い、現代日本社会の労働が抱えている問題に言及する本だ。タイトルを見て「そんなの忙しくて疲れてるからに決まってるじゃないか」と考える人もいるだろうが、人はなぜ本が読めなくなるまでハードに働かなければいけないのかという問題について考えている本であって、そこは出発点である。 そして、ある意味で映画『花束みたいな恋をした』(2021年1月29日公開/監督:土井裕泰、脚本:坂元裕二、主演:菅田将暉・有村架純)の考察本でもある。けして、冗談ではない。菅田将暉演じる主人公・麦くんが就職したことで今まで親しんできた文学・音楽・ゲーム・映画などを楽し

                          『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』と『花束みたいな恋をした』:ロマン優光連載288
                        • 『リベラリズムはなぜ失敗したのか』(原書房) - 著者:パトリック・J・デニーン 翻訳:角 敦子 - 宇野 重規による解説 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

                          著者:パトリック・J・デニーン翻訳:角 敦子出版社:原書房装丁:単行本(264ページ)発売日:2019-11-21 ISBN-10:4562057106 ISBN-13:978-4562057108 内容紹介: 多くの民主主義国家で不平等が拡大し、強権政治が台頭し、リベラリズムが機能不全となっている。注目の政治学者が政治、経済、教育、テクノロジーといった様々な分野で見られる問題を検証し、失敗の原因と是正をさぐる。 ヨーロッパ各地の極右政党、トランプ大統領誕生、ブレグジット……リベラリズムとデモクラシーはもう終わりなのか? 2018年7月にオバマ元米国大統領がフェイスブックで称賛、いまもアメリカで話題を読んでいる政治学書が日本でも先日翻訳出版された。政治学者・宇野重規による解説を公開する。 リベラリズムは死に体か?昨今、リベラリズムやデモクラシーの衰退を説く本は多い。無理もないだろう。これま

                            『リベラリズムはなぜ失敗したのか』(原書房) - 著者:パトリック・J・デニーン 翻訳:角 敦子 - 宇野 重規による解説 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
                          • ジロウ on Twitter: "女性の何倍もの数の男性が孤独で自殺する。男の友情の多くは同僚など社縁であり、実際は女性よりも(仕事の絡まない)友達は少ないし、その必要性に気づいていない。そして「男性が健全な関係の大切さに気づかないのは、そこにセックスが絡まないからだ」と >グレイソンペリー『男らしさの終焉』"

                            女性の何倍もの数の男性が孤独で自殺する。男の友情の多くは同僚など社縁であり、実際は女性よりも(仕事の絡まない)友達は少ないし、その必要性に気づいていない。そして「男性が健全な関係の大切さに気づかないのは、そこにセックスが絡まないからだ」と >グレイソンペリー『男らしさの終焉』

                              ジロウ on Twitter: "女性の何倍もの数の男性が孤独で自殺する。男の友情の多くは同僚など社縁であり、実際は女性よりも(仕事の絡まない)友達は少ないし、その必要性に気づいていない。そして「男性が健全な関係の大切さに気づかないのは、そこにセックスが絡まないからだ」と >グレイソンペリー『男らしさの終焉』"
                            • 【特集】 注目の「小型PC」5機種を一斉比較!サイズ感・性能・消費電力など知りたい特長が丸分かり

                                【特集】 注目の「小型PC」5機種を一斉比較!サイズ感・性能・消費電力など知りたい特長が丸分かり
                              • 「社会はリベラルに運営し、個人としては保守的に生きよ」…〈21世紀の道徳〉が教えること(ベンジャミン・クリッツァー) @gendai_biz

                                多数の個人が複雑な関係で結びつく現代社会において、公正に社会を運営するためにはどのような規範に従えばいいのか。そして、個々人はどうすれば幸福への道を歩めるのか。『21世紀の道徳──学問、功利主義、ジェンダー、幸福を考える』(晶文社)を発表した批評家のベンジャミン・クリッツァー氏が、様々な学問的知見をもとに考える。 「倫理学」を「心理学から考える」 このたび発売されるわたしの著書『21世紀の道徳──学問、功利主義、ジェンダー、幸福を考える』では、道徳について扱う哲学である「倫理学」の考え方について、いくつもの切り口から紹介している。そこに、進化心理学をはじめとするさまざまな心理学の知見を取り入れていることが本書の特徴だ。 ひとくちに倫理学といっても、「このような問題についてはこのような方法で判断するべきだ」「このような事態ではこのように行動するべきだ」といった「規範」に関する議論もあれば、「

                                  「社会はリベラルに運営し、個人としては保守的に生きよ」…〈21世紀の道徳〉が教えること(ベンジャミン・クリッツァー) @gendai_biz
                                • 岩波文庫解説目録(2020年版)の100冊を選んでみた - 山下泰平の趣味の方法

                                  選んでみました 岩波文庫解説目録(2020年版)から100冊選んでみた。 あくまで2020年版から選んだものなので、岩波文庫のベストなリストではない。あと上下巻やら全6巻みたいなものもあるので、厳密には100冊ではない。 これがなんのためのリストなのかといえば、私が岩波文庫解説目録(2020年版)を眺めてたら面白くなってしまい、気が向いたので100冊選んだものでしかない。既読(含む、岩波文庫以外で読んだもの)だと思われるものから、読んで良かったような記憶があるものを抽出している。 そんなわけで紹介しているものを全部読んだところで、生き方や人生が変わることはない。ただし自分が好きなジャンルくらいは発見できるかもしれない。それに加えて私が日本の近代以降の文化が好きなので、読むと近代以降の日本の文化を理解しやすくなるといった効果はあると思う。 意識したのはつながりで、ここは他のリストと少しだけ違

                                    岩波文庫解説目録(2020年版)の100冊を選んでみた - 山下泰平の趣味の方法
                                  • トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』 - 西東京日記 IN はてな

                                    本書を「『21世紀の資本』がベストセラーになったピケティが、現代の格差の問題とそれに対する処方箋を示した本」という形で理解している人もいるかもしれません。 それは決して間違いではないのですが、本書は、そのために人類社会で普遍的に見られる聖職者、貴族、平民の「三層社会」から説き始め、ヨーロッパだけではなく中国やインド、そしてイランやブラジルの歴史もとり上げるという壮大さで、参考文献とかも入れると1000ページを超えるボリュームになっています。 ここまでくるとなかなか通読することは難しいわけですが(自分も通勤時に持ち運べないので自宅のみで読んで3ヶ月近くかかった)、それでも読み通す価値のある1冊です。 本書で打ち出された有名な概念に「バラモン左翼」という、左派政党を支持し、そこに影響を与えている高学歴者を指し示すものがあるのですが、なぜそれが「バラモン」なのか? そして、本書のタイトルに「イデ

                                      トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』 - 西東京日記 IN はてな
                                    • 【発売即重版!】サブカルチャーは資本主義批判になり得るか? 『反逆の神話〔新版〕』解説:稲葉振一郎|Hayakawa Books & Magazines(β)

                                      反資本主義商品はなぜ儲かるのか? 現代世界のカラクリを哲学×経済学の見地から暴いたジョセフ・ヒース&アンドルー・ポター『反逆の神話〔新版〕「反体制」はカネになる』(栗原百代訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫)。発売1週間で重版が決まり大きな話題を呼んでいます。私たちは本書をどう読むべきか。稲葉振一郎氏(明治学院大学教授)の解説を全文公開します。 『反逆の神話〔新版〕』解説 稲葉振一郎(明治学院大学教授)本書の著者であるジョセフ・ヒースとアンドルー・ポターの言わんとすることは実にシンプルで、本書を読まれた方には一目瞭然であろう──というのは言いすぎかもしれない。しかしわたしには非常に──理屈以前に体感的なレベルで腑に落ちるものであった。ヒースの邦訳書第一弾の『資本主義が嫌いな人のための経済学』(NTT出版)を一読したとき、マルクス主義的な批判理論の位置づけから、正統派の新古典派経済学、そして

                                        【発売即重版!】サブカルチャーは資本主義批判になり得るか? 『反逆の神話〔新版〕』解説:稲葉振一郎|Hayakawa Books & Magazines(β)
                                      • ドラえもんと同じ「すこし(S)・ふしぎ(F)」を描くSF作家、レイ・ブラッドベリの作品が名作揃いな件。

                                        いきなり全然関係ない話から始まって申し訳ないんですが、皆さんドラえもん好きですか? しんざき家では、子どもたちが全員くまなくドラえもん好きでして、長男は今でも原作ドラえもんをちょくちょく読み返していますし、毎年大長編ドラえもんを家族5人で観に行っては、長女次女辺りはルナとルカごっこをやったりセーラごっこをしたりしている訳です。 ドラえもんで一つ、私が凄いと思っているところが 「40年近く前に出てきたひみつ道具が、最新の映画でも何の違和感もなく使われている」ということです。 例えば月面探査記ではお馴染み「桃太郎印のきびだんご」が出てくるんですけど、これ初出1975年なんですよ。44年前。 44年前の漫画で出てきたアイテムが、最新の映画で何の違和感も古臭さもなく使われている。 40年以上くさらないアイディアと発想っていうのも凄いですけれど、そこを中核にして、大人も子どもも何の違和感もなく同じ土

                                          ドラえもんと同じ「すこし(S)・ふしぎ(F)」を描くSF作家、レイ・ブラッドベリの作品が名作揃いな件。
                                        • 戦争、革命、疫病……数十万人単位で人が死なないと“経済格差”解消しない問題 | 文春オンライン

                                          『暴力と不平等の人類史』(ウォルター・シャイデル 著/鬼澤忍・塩原通緒 訳) 本書の主張は簡単明快。経済格差が縮まるには、常に流血の大惨事が必要だった、ということだ。戦争。革命。文明崩壊。疫病。数十万人単位で人が死ぬくらい社会が激変しないと、金持ちが既得権益や財産を手放したりはしない! 経済格差の拡大は現代社会の大きな課題とされる。本書は多くのデータや既往研究をもとに、石器時代以来の各種社会における経済格差の状況と、その背景にある力学を描き出す。社会が安定して豊かになると、どこでも必ず格差は開く。そして、それが縮まったわずかな事例は、必ず死と暴力に彩られる! それを嫌と言うほど描き出した挙げ句、「何かを願う時には、よくよく注意する必要がある」という一文で本書は終わる。つまり極端に言えば、血みどろの騒乱と殺戮を引き起こす度胸もないくせに格差縮小とか口走るな、と著者は嘲笑しているのだ。 開発援

                                            戦争、革命、疫病……数十万人単位で人が死なないと“経済格差”解消しない問題 | 文春オンライン
                                          • [書評] なぜ、男子は突然、草食化したのか――統計データが解き明かす日本の変化: 極東ブログ

                                            本書のタイトル『なぜ、男子は突然、草食化したのか』というのは、気になる問いかけだ。草食化というのは、恋愛に淡白ということである。異性と付き合うために一生懸命活動するということの反対。つまり、異性の肉体を求めているという比喩での肉食の対比である、はずだ……。 たしかに、私のような昭和の人間からすると、近年、男子が女子を口説き落とそうと必死になるというのはなくなったものだなと思う。この問いは、私の実感としてある。そこで、なぜだろうと思う。私の印象で言うなら、いやいや、今日はその話は控えておくとしてだ、それをタイトルにもってくる本書はどう答えているのか。しかも、その答えは、印象といったものではなく、副題にあるように「統計データが解き明かす日本の変化」である。統計、つまり、ファクトは何を語っているのか? 著者は、自身を「統計探偵」とする。統計から、各種の謎解きをする探偵になるというのだ。実際、著者

                                            • 1万円を切るスピーカーMoukey M20-3の音がいい! 低予算で始める中華オーディオによるPC高音質化 - ARTIFACT@はてブロ

                                              ここ最近すっかりオーディオ沼にハマっているのだが、気になるのは世間ではスピーカーで音を聴くことにあまり関心がないこと。良い音で聴くというと、イヤホンやヘッドホンの話ばかりで、スピーカーのことはあまり話題にならない。住環境の問題で大きな音が出せないとか、スピーカーで良い音を聞こうとするとコストがかかるイメージがあるからだろうが、コストに関しては、最近は中華オーディオ製品のグレードが高く、低コストで良い音が聞けるようになっている。しかし、そういう情報がまとまってないので、ちょうどAmazonのブラックフライデーでセール中ということもあり、自分の知見をまとめておく。 結論 音の空間が広がるスピーカー PC高音質化に必要なのはUSB DAC+アンプ+パッシブスピーカー クリアな音が出るMoukey M20-3 アンプ&USB DAC YouTubeの音を良くしたいのならNobsound NS-01

                                                1万円を切るスピーカーMoukey M20-3の音がいい! 低予算で始める中華オーディオによるPC高音質化 - ARTIFACT@はてブロ
                                              • 【レビュー】 こんなに小さくてSSD!? しかもお手頃価格! いろいろ試してわかったバッファロー製“USBメモリ型SSD”の規格外っぷり

                                                  【レビュー】 こんなに小さくてSSD!? しかもお手頃価格! いろいろ試してわかったバッファロー製“USBメモリ型SSD”の規格外っぷり
                                                • ヤン・ド・フリース『勤勉革命』 - 西東京日記 IN はてな

                                                  副題は「資本主義を生んだ17世紀の消費行動」。タイトルと副題を聞くと、「勤勉革命なのに消費行動?」となるかもしれません。 「勤勉革命」という概念は、日本の歴史人口学者の速水融が提唱したものです。速水は、江戸時代の末期に、家畜ではなく人力を投入することで収穫を増やす労働集約的な農業が発展したことを、資本集約的なイギリスの産業革命と対照的なものとして「勤勉革命」と名付けました。 本書によると、この労働時間の増大は17世紀後半のオランダにも見られるといいます。著者は、およそ1650〜1850年の時期を「長い18世紀」と呼んでいますが、この時期、世帯単位の労働時間は増えていきました。 この時期のオランダで「勤勉革命」などと言うと、マックス・ウェーバーを読んだ人であれば「プロテスタンティズムの影響?」と思うかもしれませんが、著者が本書で指摘する要因はずばり「消費」です。 この時期のオランダでは、陶器

                                                    ヤン・ド・フリース『勤勉革命』 - 西東京日記 IN はてな
                                                  • おれも『十三機兵防衛圏』の良さについて語ろう - 関内関外日記

                                                    『十三機兵防衛圏』公式サイト 男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第561回「『十三機兵防衛圏』の凄さについて」 - 4Gamer.net [ゲーム] 毎年、年末年始にゲーム一本やろうかな、とか思うんだよな。 2019/12/19 15:23 おれは昨年の12月19日にこんなことを書いた。「思うんだよな」ということであって、毎年年末年始をゲームに費やす、という習慣はない。だいたい普段見ないお笑い番組を見て大笑いして(普段見ない反動)、ダラダラ酒を飲んで終わってしまう。が、この『十三機兵』、どうも面白そうだ……。 というわけで、有馬記念で勝ったのもあって、ダウンロード購入してしまった。してしまった以上はやるしかない。 ……結果、おれの2019年末~2020年始はほとんど『十三機兵防衛圏』によって占められたといっていい。おれはこれだけのことをもって未プレイの人に『十三機兵防衛圏』をすすめること

                                                      おれも『十三機兵防衛圏』の良さについて語ろう - 関内関外日記
                                                    • 資本主義だけ残った | 世界を制するシステムの未来 | みすず書房

                                                      「理論、データ、歴史、批判的思考――社会科学の頂点のひとつがここにある。格差は誰かのせいでも、ましてや自分のせいでもない。それは資本主義のシステムにあるのだ」 吉田徹(同志社大学教授) 『エコノミスト』誌ベストブック 『フィナンシャルタイムズ』紙ベストブック 『フォーリン・アフェアーズ』誌ベストブック 『プロマーケット』誌ベストブック 『プロスペクト』誌ベストブック 「われわれの未来についての、重要な問題をすべて提示している」ゴードン・ブラウン(元英首相) 「経済統計の第一人者[による]豊かな議論だ」ジェームズ・K・ガルブレイス(テキサス大学オースティン校教授) 「北京に住むのか、ニューヨークに住むのか、決断のときは近づいている」エドワード・ルース(『フィナンシャル・タイムズ』紙) 「この二つの資本主義が世界情勢を支配している。両者の共進化が今後数十年の歴史を形成することになるだろう」『エ

                                                        資本主義だけ残った | 世界を制するシステムの未来 | みすず書房
                                                      • 【翻訳希望!】『資本主義の倫理学』 - 道徳的動物日記

                                                        The Ethics of Capitalism: An Introduction (English Edition) 作者:Halliday, Daniel,Thrasher, John Oxford University Press Amazon さきほどの記事で書いたように、この4月は引越しに伴う作業と会社の仕事とでなかなか読書・執筆の時間が取れなかった。……とはいえ、そんななかで日々の楽しみを提供してくれたのが、The Ethics of Capitalism : An Introduction (『資本主義の倫理学:入門』)。 出勤前や会社の仕事が終わった後などに時間を見て1章ずつ読んでおり、まだ11章と12章も読んでいないのだけれど、どの章も議論の内容が実に明晰に整理されていて、読むたびに思考や気持ちがスッと落ち着いていった。常々思うのだが、良質な哲学書や入門書・解説書って鎮静

                                                          【翻訳希望!】『資本主義の倫理学』 - 道徳的動物日記
                                                        • 資本主義から逃れることはできるか?(できません) - 読書メモ:『資本主義だけ残った』 - 道徳的動物日記

                                                          資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来 作者:ブランコ・ミラノヴィッチ みすず書房 Amazon 『資本主義だけ残った』では、アメリカを代表とする「リベラル能力資本主義」と中国を代表とする「政治資本主義」、現代の社会に存在するふたつの形の資本主義を比較しながら、それぞれの成り立ちや特徴や未来予想図が論じられたりする。 先日に紹介した『自由の命運』や、あるいはフランシス・フクヤマの一連の著作など、英語圏で出版される経済史や文明論では「リベラルで民主主義的な社会は、抑圧的な社会や権威主義的な社会より正しくて望ましい」という規範論が前提とされてしまいがちだ*1。そのために中国のような非民主主義的な国家の経済成長やその他の方面での躍進が予測できなかったり、「一過性のものであって、リベラルな民主主義に移行しない限りは崩壊するに決まっている」と願望込みの予測が述べられたりするようになってしま

                                                            資本主義から逃れることはできるか?(できません) - 読書メモ:『資本主義だけ残った』 - 道徳的動物日記
                                                          • 「自由の国と感染症」訳書刊行に添えて、現在の私の見方|ショーンKY

                                                            お久しぶりです。半年ほど前に身内の「ゼロコロナ」派からコロナに関する言論活動を責められ、新型コロナ対策に関する活動の身動きが取れない状況となっておりました。この間、一介の素人であった私を信頼してくださった方々に大変なご迷惑をおかけしたことを、この場を借りて平に陳謝いたします。大変申し訳ございません。 このたび、ヴェルナー・トレスケン(著)西村公男・青野浩(訳)「自由の国と感染症 法制度が映すアメリカのイデオロギー」みすず書房,2021を訳者よりご恵贈いただきました。この本は、新型コロナウイルス流行以前に書かれた感染症と法制度、社会の関係を探った数少ない研究書の一つです。COVID-19以前に書かれたということは、すなわちこの感染症をめぐる政治的立場に《汚染》されていない数少ない研究書とも言うことが出来、今後20年この書籍と同等のフェアさと専門性を兼ね備えた本は出ないのではないかと思える、貴

                                                              「自由の国と感染症」訳書刊行に添えて、現在の私の見方|ショーンKY
                                                            • 「15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史」堀越宏一/甚野尚志 編著 | Call of History ー歴史の呼び声ー

                                                              「中世ヨーロッパ」は現在のヨーロッパ地域における古代と近代に挟まれた概ね五世紀から十五世紀までの千年間を指している。現在の我々の生活にも大きな影響を及ぼしているヨーロッパ発祥の文化や思想、制度の淵源は概ねこの時代に端を発しているが、どんな時代だったのかといざ知りたいと思っても、その幅広く奥深い世界はなかなかにハードルが高い。そんな「中世ヨーロッパ」を知るために入門として一押しなのが本書である。 何故一押しなのか。まず、本書は通史ではなく、そのタイトル通り、十五のテーマに分けて論じられる分野史である。 かつてはヨーロッパ史も政治・外交・戦争の歴史を中心に考察されてきたし、現在でもそれらへの注目は高い。ゲルマン人が侵入してフランク王国が成立し、カール大帝が戴冠し、ドイツとフランスとイタリアに分裂して神聖ローマ帝国とフランス王国とイタリア都市国家がそれぞれ繁栄し、ヴァイキングの侵攻やイスラームと

                                                                「15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史」堀越宏一/甚野尚志 編著 | Call of History ー歴史の呼び声ー
                                                              • 訳書情報 「親切の人類史」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

                                                                親切の人類史――ヒトはいかにして利他の心を獲得したか 作者:マイケル・E・マカローみすず書房Amazon 以前私が書評した「The Kindness of Strangers」が「親切の人類史」という邦題で12月に邦訳出版されるようだ.本書は実験心理学者であるマイケル・マカローによるヒトの見知らぬ他人に対する利他性がどのように説明されるのかを扱ったものだ.前半は進化的な視点から包括適応度理論(血縁淘汰),マルチレベル淘汰,直接互恵,(社会淘汰を含む)間接互恵からどこまで説明できるのかを扱い,後半では共感のサークルの拡大が理性の役割とともに歴史的に語られている. 前半部分は非常に簡潔かつ明晰な良いまとめになっている.特に現在筋悪のマルチレベル淘汰論者が偏狭な利他主義仮説をもてはやしていることに対して,そもそもマルチレベル淘汰と包括適応度理論(血縁淘汰)は数理的に等価であり,マルチレベル淘汰で

                                                                  訳書情報 「親切の人類史」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
                                                                • 世の中の仕組みと人生のデザイン l 橘 玲 | DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)

                                                                  経済的独立すなわち自由は、世の中の仕組みを正しく理解し、最適な人生の戦略をデザインすることで、もっとも確実に達成できる。 世の中(世界)はどんな仕組みで動いているのだろう。そのなかで私たちは、どのように自分や家族の人生を設計(デザイン)していけばいいのだろうか。経済、社会から国際問題、自己啓発まで、さまざまな視点から「いまをいかに生きるか」を考えていきます。質問も随時受け付けます。 橘 玲の最新刊『幸福の「資本」論 あたなの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』好評発売中! 「幸福な人生」を送るために幸福を定義すると基盤となるのは3つの資本。その組み合わせで8つの人生パターンが考えられる。あなたが目指すべきはどの人生パターンか? ダイヤモンド社から発売中!(1,650円 税込) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【DIAMOND PREMIU

                                                                    世の中の仕組みと人生のデザイン l 橘 玲 | DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)
                                                                  • 書評 「宗教の起源」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

                                                                    宗教の起源 作者:ロビン・ダンバー,小田哲白揚社Amazon 本書はダンバー数で有名な進化心理学者ロビン・ダンバーが宗教を語る一冊.これまでに宗教を進化的に説明するものとしては,(宗教が信者に誤信念を抱かせ,儀式等にコストをかけさせることから個体にとって適応度を下げるものであることを前提にして)進化的に形成された適応的な認知傾向による副産物だとするもの(アトラン,ボイヤーなど),原始宗教は副産物であり,さらに組織化された宗教にはミーム複合体の側面もあるとするもの(デネット,ドーキンスなど),文化進化として説明するもの(ライトなど),マルチレベル淘汰をもちだして集団や社会にとって適応的であると説明するもの(DSウィルソンなど)などがあった.本書では,前提を見直して宗教は個体にとって適応的だったのではないかという観点から説明を試みるものになる.そしてその説明はこれまでのダンバーの研究領域である

                                                                      書評 「宗教の起源」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
                                                                    • 「加速社会」とは何か? 私たちを追い立て、充足感を奪っているものの正体(出口 剛司) @gendai_biz

                                                                      「加速社会」とは何か? 私たちを追い立て、充足感を奪っているものの正体 いつも時間がなくて、どこか空疎 忙しいのに、空疎 いつも何かに追い立てられている、つねに時間がない、息をついているヒマもない——日々こうした思いを抱いて生活を送っている人は少なくないだろう。 私たちは、高度なテクノロジーによって、余りある時間を手にするはずであった。だが実際は、毎日何かに追われ、多忙すぎる日々を送っている。また、加速する時間の中で忙しさが増す一方、ふと我に返ると、自分も周囲も、何一つ進歩がないという事実に愕然とする。 私たちはどうして、これほど時間がなく、いつも様々なイベントに追い立てられており、にもかかわらず、どこか空疎な感覚を抱いているのか。 ドイツの社会理論において、大きな存在感を示してきた「批判理論」という分野がある。その批判理論の新世代を代表するハルトムート・ローザの『加速する社会―近代におけ

                                                                        「加速社会」とは何か? 私たちを追い立て、充足感を奪っているものの正体(出口 剛司) @gendai_biz
                                                                      • 労働から逃避したところで幸せになれるの?(読書メモ:『隠された奴隷制』) - 道徳的動物日記

                                                                        隠された奴隷制 (集英社新書) 作者:植村邦彦 発売日: 2019/08/23 メディア: Kindle版 本のタイトルはマルクスの『資本論』に出てくるキーワードであり、この本の内容もマルクス主義的なものだ。 第一章〜第三章では、ロックやモンテスキューからはじまってアダム・スミスやヴォルテールやヘーゲルなどの哲学者たちが「奴隷制(黒人奴隷制)」についてどんなことを言っていたか、というあらましが紹介される。そして、第四章では、マルクスの書いた「隠された奴隷制」とは何を意味していたのか、という詳細が明らかにされる。 第五章や第六章では現代社会の労働や資本主義について話が移る。この本の結論としては、一見すると自由で自発的に生きている現代の賃労働者たちが働く環境も、けっきょくは「隠された奴隷制」であるに過ぎない、というものだ。 個人的な感想としては、第四章までには思想史的な面白さがあった一方で、第

                                                                        • パンデミックを経ても、「医学至上主義のユートピア」は訪れない(太田 充胤) @gendai_biz

                                                                          未曽有の危機と文学の想像力 COVID-19の流行は、現代科学の死角からの不意打ちだった。 人類は新しい病原体と戦うための治療薬やワクチンを持たないだけでなく、その流行を抑えるための直接的なエビデンスも持っていなかった。エビデンス不在の病態が、エビデンスの蓄積をはるかに上回る速度で拡散し流行する、その恐怖。現代科学ががっちりと根を張った今日の世界とて決して安全地帯ではないことを、我々は思い知らされることになった。 現代科学がその体制を持ち直すまでのあいだ、巷では多種多様な真理が乱立した。真理と真理は時に激しく闘争した。「専門家」を名乗る者同士の意見が、真っ向から対立することもしばしばあった。どの意見を支持すべきかは、一般人にはもちろんのこと、医療者でさえ判断しがたい状況が続いた。いや、状況はいまもそれほど変わらないかもしれない。文字通り、世界中が混乱に陥った1年間だった。 未曽有の危機に直

                                                                            パンデミックを経ても、「医学至上主義のユートピア」は訪れない(太田 充胤) @gendai_biz
                                                                          • 最高品質のルポ、トランプだけでないアメリカ。『グローバル資本主義VSアメリカ人』という傑作 : やまもといちろう 公式ブログ

                                                                            出張の移動時間の友として携行した本書、読み終えたもののどうしても再読したくなって二度読み、三度読みしてしまうぐらいに興味深い内容でありました。いわゆる「病める大国・アメリカ論」に類される内容でありつつ、テーマとして辺境の厳しい環境で歯を喰いしばって生活をする地元のアメリカ人やメキシコ人たちの苦境と葛藤。あるいは、豊かな地域に生まれ育ちながら、精神的に行き詰まり、自問自答しながら命を繋いでいく人々の記録と記憶が詰まっているのが本書『グローバル資本主義VSアメリカ人』(篠原匡・著)であります。 『グローバル資本主義VSアメリカ人』Amazonリンクはこちら 序章から、筆者のアメリカ大統領選に対する読み違えの懺悔があり、実は現実のアメリカ人が何を考えているのかを知りつつメディアが有利とするヒラリー・クリントンさんの勝利を疑わなかった経験を踏まえ、本書は始まります。冒頭に元吉烈さんの手によるものと

                                                                              最高品質のルポ、トランプだけでないアメリカ。『グローバル資本主義VSアメリカ人』という傑作 : やまもといちろう 公式ブログ
                                                                            • コロナウイルス感染症COVID-19と監視社会

                                                                              はじめに 本年5月27日に,国家戦略特区法の改正案,いわゆる「スーパーシティ法案」が国会で成立した.新型コロナウイルス禍の拡大に伴う緊急事態宣言発令中の成立であり,報道などでは,遠隔医療の本格導入を始めスマート技術を用いた感染対策の進展に期待する声も多く聞かれた. このスーパーシティ構想の背景としてAIやビッグデータを活用して社会のあり方を根本から変えるような都市設計を目指す動き,すなわちスマートシティの建設が世界各地で本格化していることが指摘されている.そのようなスマートシティの代表的な例として,内閣府の資料にも挙がっているのが中国浙江省杭州市の「シティ・ブレイン」である (内閣府地方創生推進事務局2020).シティ・ブレインは,市街を走行中の自動車の情報をライブカメラを用いて収集,そのビッグデータをAIで分析してドライバーにフィードバックすることで都市の混雑を解消し,交通事故を減少させ

                                                                                コロナウイルス感染症COVID-19と監視社会
                                                                              • 書評 「人が自分を騙す理由」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

                                                                                人が自分をだます理由:自己欺瞞の進化心理学 作者:ロビン・ハンソン,ケヴィン・シムラー原書房Amazon 本書は「ヒトは行動の動機について意識的に気づいていないことがある」ことをテーマにした本になる.著者はこのテーマについて深く興味を抱いた2人で,1人はコンピュータ科学と科学哲学を学んだ後にベンチャー企業でエンジニアをしていたケヴィン・シムラー,もう1人は社会科学者かつ経済学者(修士は物理学と科学哲学)であるロビン・ハンソンであり,いかにも知的好奇心と才能にあふれた2人組だ.邦題の副題は「自己欺瞞の進化心理学」となっているが,著者たちが本職の進化心理学者であるわけではない.しかし関連文献をしっかり読み込んだ上で書かれていて内容は深い. 原題は「The Elephant in the Brain: Hidden Motives in Everyday Life」.「部屋の中のゾウ」というのは

                                                                                  書評 「人が自分を騙す理由」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
                                                                                • 現実の複雑さに向き合うために――ヤンキーの生活世界/『〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー』著者、知念渉氏インタビュー - SYNODOS

                                                                                  現実の複雑さに向き合うために――ヤンキーの生活世界 『〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー』著者、知念渉氏インタビュー 情報 #新刊インタビュー ――本日は、日本教育社会学会奨励賞〔著書の部〕に選ばれた『〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー』の著者、知念歩さんにお話を伺います。なぜ「ヤンチャな子ら」を研究しようと思ったのですか? 卒論を書くときに、若者文化をテーマにしたいと思ったんです。そのことを、当時の指導教員であった『裸足で逃げる』の上間陽子先生に相談したところ、渡されたのがポール・ウィリスの『ハマータウンの野郎ども』とディック・ヘブディジの『サブカルチャー』という本でした。 とくに『ハマータウンの野郎ども』の第一部は、とても興味深く読んだことを覚えています。ただ、卒論では、自分自身が当時足繁く通っていた那覇の国際通りの裏路地にあるセレクトショップに集う若者たちの文化について書きました

                                                                                    現実の複雑さに向き合うために――ヤンキーの生活世界/『〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー』著者、知念渉氏インタビュー - SYNODOS

                                                                                  新着記事