ある日、新潮社のKさんがニヤニヤしながら私のもとにやって来た。 「あのー、うちの『波』が今年で50周年なんですが、そのことをすっかり忘れていたんですよね」 私と同い歳のKさんは昨年6月号から本誌の編集長となった。その号の「編集室だより」に、彼は25年前の入社試験で「『波』に配属されたい」という希望を述べたと書いている。彼の、そして私が「地方都市に住んでいた十代の頃」、つまり1980年代の『波』には小林信彦や筒井康隆、大江健三郎の連載が載っていた。いわば、私たちの「本の世界」を広げてくれた雑誌だったのだ。その大恩ある雑誌の50周年を忘れていたって? 呆れていた私は、「で、ちょっとお願いがあるんですが......」という彼の話にさらに呆れることになる。1967年の創刊号から現在出ているまでの号をぜんぶ読んで、50年をふり返る記事を書いてほしいというのだ。しかも、2カ月半という短い間で! 「ナン