河原努(皓星社) ■変わった遺稿集 前回、花村奨「対談「少女雑誌編集」」で『令女界』創刊編集長である藤村耕一の名前が拾えたと書いた。国立国会図書館オンラインで検索をかけると『遮莫』(昭和42年、タカダ印刷)という著書が引っかかった。版元が印刷所になっているということは自費出版(私刊本)である可能性が高い。出納してみると、派手な変な本であった。自己顕示欲の高さから他にも本を出している気配を感じて「日本の古本屋」を調べると、『夢のアルバム』(昭和37年)、『谺』(昭和38年)、『現』(昭和46年)の3冊に加え、『彩雲 : 藤村耕一先生遺稿集』(昭和52年)が出品されていた。各三千円前後、とりあえず年譜や自伝を期待して遺稿集だけを取り寄せてみた。これも変わった本であった。 『彩雲 : 藤村耕一先生遺稿集』はB5判・函入りの144頁、坂井範一の油絵を大胆にあしらった装丁で、中にはカラー写真がふんだ