■ 資料紹介:石原 美奈子 編著 『せめぎあう宗教と国家 ——エチオピア 神々の相克と共生——』 ■ 児玉 由佳 ■ 『アフリカレポート』2015年 No.53、p.35 (画像をクリックするとPDFをダウンロードします) エチオピアの宗教別内訳は、統計ではエチオピア正教会44%、イスラーム34%、プロテスタント19%、伝統宗教3%、カトリック0.7%となっている(2007年国勢調査)。しかし、これは一人一宗教を前提にした回答であり、日常生活における宗教の重層的な関係を説明できない。本書は、文化人類学的な視角を中心にすえ、「人々の生活レベルでの宗教の多様なあり方にこだわる」(p.421)ことで、現代のエチオピアにおける宗教をとりまく政治的・社会的そして文化的状況について検討したものである。 本書は5部構成で9章から成っている。第一部「国家と宗教」では、多数の信者を抱えるエチオピア正教会(第