太宰治(左)、永井荷風 (c)朝日新聞社 江戸川乱歩 (c)朝日新聞社 今年も終戦記念日が近づいてきた。74年前、文豪たちはそれぞれの思いで玉音放送を聞いた。作家たちが書き残した文章からは、それぞれの「戦争」への関わり方だけでなく、当時の人々の生活も垣間見える。夏休みの読書にいかがか。 【写真】江戸川乱歩 * * * 終戦の1日前、昭和20年8月14日、永井荷風は谷崎潤一郎と会っている。3月の東京大空襲で焼け出され、疎開先の岡山市でも空襲に遭い、ほとんどすべてを失っていた。当時、岡山県北部の勝山町(現・真庭市)に疎開していた谷崎は盟友の身を案じ、勝山に移り住むことを提案していた。13日の列車で勝山に着いた荷風は谷崎の用意した宿に1泊、翌昼谷崎の居宅で食事しながら移住について話し合ったが、荷風は移住を辞退。 谷崎は日記にこう書き残した。 「本日此の土地にて牛肉一貫(200円)入手したると