〝魚の王様〟鯛(たい)とご飯を合わせた鯛めしは、さまざまな形の郷土食が各地に伝わる。鯛の産地で知られる愛媛県だけでも、趣異なる2通り。中でも「宇和島鯛めし」は、暑さで食欲が落ちてもするすると食べられて、夏にもってこいの一品だ。 愛媛県宇和島市で昭和30年に創業し、鯛めしの名店で知られる「かどや」。旗艦店として2年前、東京都内にオープンした「かどや 日比谷邸」(港区)には、暑い日でも看板料理を目当てに多くの人が足を運ぶ。 お膳には鯛の刺し身、ほかほかのご飯、そして生卵が入ったたれが添えられている。食べる作法はざっとこんなふうだ。 まず、卵の黄身を残す程度に軽くたれを混ぜる。その中に鯛の身、薬味、海藻などを全て入れ、味をなじませる。一口目は鯛の身を箸でつまみ、ご飯にのせて。後はたれごとご飯にかけて〝お茶漬けスタイル〟でかき込む。 嚙(か)むほどに鯛のうまみ、たれのかつおだしの風味が重なり、卵が