第318号 職種限定合意が存在する場合の配転命令の適法性 ~滋賀県福祉用具センター事件~ ~~最高裁第二小法廷令和6年4月26日判決※1~~ ツイート 1.はじめに 本件は、配転命令の適法性が争われた事案であるが、一般的な労働契約の地位確認請求ではなく、損害賠償が請求された珍しい事案である。そのため最高裁も、本件配転命令に労働契約上の根拠がないことを示したうえで、債務不履行ないし不法行為の成否と損害額を確認させるために差し戻すという対応をとった。したがって、厳密には配転命令権行使の有効性を正面から検討しているわけではないが、職種限定の黙示の合意の存在を明確に認め、しかもそれを根拠に配転命令が違法であることを示した初めての最高裁判決として非常に大きな意義を有する。 なお、本件は以下の通り、訓戒書撤回や人事制度の変更、第一審原告Xの罹患した適応障害など豊富な争点があるが、最高裁は配転命令の有効