映画に描かれた女性と酒とたばこを紹介してきたが(第177回、第181回)、今回は男女問わず心配されるアルコール依存症の恐ろしさを描いた映画をご紹介する。 「失われた週末」の宙づりボトルとテルミン まずは第18回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞を受賞した1945年製作のビリー・ワイルダー監督作品「失われた週末」から。 本作は、レイ・ミランド演じる作家ドン・バーナムが、3年もの間アルコール依存症に苦しんだ末に、兄ウィック(フィリップ・テリー)と恋人の女性記者ヘレン(ジェーン・ワイマン)の助けを得て立ち直りのきっかけをつかむ週末の数日間を描いたドラマである。 冒頭、ニューヨーク摩天楼の高層ビル街が映し出され、カメラがパンすると古びたレンガ造りのアパートの窓から酒瓶がぶら下がっているのが見える。これは、ドンが兄の目を盗んで隠した虎の子の酒で、回りくどい説明抜きでドンがアルコール依存