兵庫県立歴史博物館(姫路市本町)で開催中の特別展「人間国宝・桂米朝とその時代」は、米朝さんの三男で同館事業企画課長の中川涉(わたる)さん(56)が手掛けた。職場では「米朝の息子」を“封印”してきたが、同館への異動内示を受けたその日、父親が亡くなった。「家族だからこそ伝えられる米朝の生涯がある」。親族や一門に支えられ、日記や手紙など多く未公開資料をそろえた。涉さんは「父を改めて知る濃密な時間だった」と振り返る。(宮本万里子) 涉さんは大学卒業後の1984年、県教育委員会に技術職員として入庁。遺跡の発掘調査員や県立考古博物館(播磨町)の学芸員として勤務した。 米朝さんが亡くなった2015年3月19日、歴史博物館への異動内示を受けた。4月に着任すると、展示を提案された。 「息子が担当するのはどうか」と迷った。しかし、兄の米団治さんら親族や一門の弟子らは大賛成。涉さんは「背中を押された」と感じた。