ユネスコの世界文化遺産登録を目指す堺市の百舌鳥(もず)古墳群にある「いたすけ古墳」。市民の力で古墳の開発を止めた、日本の文化財保護運動の原点として知られる。保存運動から60年の節目を迎えるこの古墳を見つめ直す企画展が5日から、堺市博物館で始まる。10月18日まで。開発で消滅した大型古墳の出土品も展示し、古墳群を世界遺産に登録する意義を考えてもらう狙いだ。 いたすけ古墳は住宅地にある全長146メートルの前方後円墳。保存運動が始まったのは1955(昭和30)年だ。土地開発会社が古墳内を宅地に造成する目的で、削り取った土を運ぶ橋を架ける工事をしていたのを、近くの高校教諭が発見したことがきっかけだった。 市民の手で古墳を買い戻そうと始めた募金は全国に広がり、当時の金額で30万円以上が集まった。市は古墳の買い上げを決め、翌年正式に国の史跡として保存することが決まった。墳丘部は450万円で買い上げた。