フィリップ・ホセ・ファーマー『恋人たち』や沼正三『家畜人ヤプー』など、架空の設定を大胆に用いてタブーブレーキングなテーマ展開や表現力を獲得したSFがある。その系譜に新しいタイトルが加わった。もっとも、『プラスチックの恋人』の場合、タブーブレーキングというより、コントラヴァーシャル(論争を喚起する)といったほうが正しいかもしれない。 物語の中心にあるのは、性暴力をも含む児童性愛である。ただし、そこには直接の被害者はいない。 ここで俎上にあがるさまざまな論点は、いまの日本社会でさかんに取り沙汰されている二次元児童ポルノとまったく同型だ。 舞台は近未来の日本。拡張現実の発展と人工意識の実現によって、セックス用アンドロイドが実用化されている。それらはオルタマシンと呼ばれた。一体が非常に高価のため、個人で購入されることはほぼなく、たいていは認可を受けたセンターでサービスを提供している。そこまでは、い