多様な動植物をはぐくむ東南アジアのボルネオ島。近年、パーム油の原料となるアブラヤシの農園が急速に広がり、熱帯雨林が消滅しつつある。「ナショナル ジオグラフィック日本版」11月号では、そんな危機的な現実をレポートした。 熱帯雨林の目覚まし時計は、テナガザルの愛の叫びだ。まだ暗いうちから、メスの気を引こうと、オスたちは木々の高みで競うように声を上げる。いったいどんな甘い言葉で誘っているのか、我々にはあれこれ想像することしかできない。 キャンプから小川伝いに道なき道をたどって森に入った。あたりには、一番下の枝でも地上から高さ30メートルはありそうな巨木がそびえている。うっそうと茂った林冠からわずかに光が差してくる頃、カニクイザルが姿を見せた。川で魚かカエルにありつこうという魂胆らしい。そのサルが上流に消えてゆくと、今度はチビオマングースが、楽しげに川をはねてきた。 林がいったん途切れたあたりで、